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安全・安心な給食提供を目指して

8面記事

企画特集

20台設置された蒸気回転釜が1万2千食を支える

倉敷市立倉敷中央学校給食共同調理場

 倉敷市の新たな学校給食共同調理場は最新の衛生基準を満たすだけでなく、アレルギー対応、食育推進、環境負荷の低減などさまざまな機能を備えた施設だ。その概要から、これから求められる共同調理場のあり方を探る。

最新の衛生基準で今春稼働
 倉敷市立倉敷中央学校給食共同調理場は、既存の6カ所の学校給食共同調理場のうち、設備が老朽化し衛生基準を満たせなくなっていた4カ所を統合したものとして計画された。
 平成30年10月に竣工。平成31年4月から提供を開始する。市町村合併特例債を活用し財源を確保した。
 敷地面積1万542・14平方m、鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造2階建。建築面積は3586・16平方m、延べ面積5131・61平方m。
 調理能力は最大1万2千食が可能で、6小学校、14中学校に配食し、献立は三本立てで乳と卵へのアレルギーにも対応した計6パターンで調理開始する。
 当共同調理場の特色は最新の衛生基準を満たした構造だ。学校給食衛生管理基準、大型調理施設衛生管理マニュアル、HACCPの概念に基づく徹底した衛生管理手法を導入。汚染エリアと非汚染エリアを明確に分け、いずれも床が乾いた状態で調理する「ドライシステム」を用いて細菌の繁殖を抑える。

エリアを徹底して区分微酸性電解水も活用
 徹底した衛生管理のポイントは、土などの汚れがある食材や学校から戻ってきた食器・コンテナを取り扱う「汚染エリア」の汚染を、調理を行う「非汚染エリア」に持ち込まないことで、エリアの間には壁があり、洗浄後の食材は受渡口かコンテナを通してしか移動させない仕組みなど、人や食材の移動を徹底して管理している。また、床の色を汚染エリアと非汚染エリアで塗り分け、調理員がエリアをしっかり意識できるよう配慮している。
 設備面では各エリアでそれぞれ準備室・手洗い室を設け、エリアを移動するには作業着や靴を履き替え、手を洗いなおす構造となっている。
 衛生管理の徹底ぶりは、殺菌効果があり、かつ安全性の高い「微酸性電解水」を多く活用していることにも表れる。微酸性電解水は次亜塩素酸を主成分とする水溶液で、厚生労働省が平成14年に食品添加物として指定した殺菌料だ。
 泥落とし室、肉魚類下処理室、野菜類下処理室などのシンク下に微酸性電解水の生成装置を設置。調理器具や設備の洗浄はもちろん、野菜や果物の洗浄にも活用する。

調理エリアはおいしく・安全を両立
 調理を行う非汚染エリアでは高機能調理器や、適温で給食提供ができる保温・保冷食缶を導入した。
 焼物・揚物・蒸し物室では、肉魚類下処理室で処理されたコロッケ・ハンバーグを1時間で6千食調理可能。煮炊調理室と隔離して食品同士が接触することによる汚染を防いでいる。
 和え物室で調理されるサラダ等は菌の繁殖を防ぐため低温での調理が必須で、煮炊調理室で調理した食材を真空冷却器で冷却後、冷却した回転釜で調理し、冷蔵庫で保管してから移動させる。
 アレルギー調理室は唯一2階に設置してある調理室で、100食を調理予定。アレルギー対応室専用の手洗い室があり、食材の搬入と調理済の献立の搬出は、1階の調理室と完全に分離され、アレルギー原因物質の混入を防ぐ構造となっている。
 調理した給食を格納するコンテナの洗浄と消毒も最新鋭の設備で行う。コンテナプールでは天吊り式コンテナ消毒を採用。洗浄済みの食缶をコンテナに入れたまま丸ごと85度~90度で90分間熱風消毒し、食缶の仕分けや移し替え作業を軽減する。

食育推進の拠点に
 これからの共同調理場は学校や地域における食育のセンターとしての機能も担う。同共同調理場は見学用通路や食育展示コーナーを設置し啓発に活用する。
 栄養教諭や調理員を対象とした研究・研修のため「調理実習室」「会議室」を設置。魅力的な施設を呼び水に地産地消の推進と、地域に開かれた共同調理場としての運用が期待されている。
 倉敷市教委保健体育課の三宅香織課長は「これからの学校給食は、最新の知見に基づく『安全』と『美味しい』を両立させた上で、社会の持続可能性に寄与する食育を行うことが求められています。倉敷中央学校給食共同調理場は、それを実現する拠点施設と位置付け、質の高い給食と食育を推進していきたいと考えています」と話す。


残菜計量システムと大型ディスポーザーを設置し、環境学習も視野に入れた食育にも取り組む

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