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災害時の熱中症対策として、市内すべての避難所に大型扇風機を導入

13面記事

施設特集

今回導入が決まったビッグファン

導入事例
東京・八王子市

 現在、多くの自治体が学校施設の体育館を主な避難所として指定しているが、夏季などの気温が高い時期における暑さ対策が全国的な課題となっている。こうしたなか、いち早く市内すべての避難所に大型扇風機の導入を決めたのが八王子市だ。

 八王子市では災害時における避難所施設の熱中症対策を目的に、小・中学校の体育館等すべての避難所121箇所(各箇所2台ずつ合計242台)に大型扇風機を導入する。
きっかけは、熊本地震を受けて平成29年8月に実施した宿泊防災訓練において、夜間の暑さ対策が課題になったことだった。「避難所生活はただでさえストレスがかかるもので、市民の健康を守るためには少しでも過ごしやすい環境を整備することが重要です。そこで大型扇風機を3カ年計画で配備する予定でしたが、昨年の猛暑を踏まえ、補正予算を組んで前倒しで導入することになりました」と話すのは、高橋健司課長(生活安全部防災課)だ。
 4月に起きた熊本地震でも、避難所生活が長期化する中で暑さ対策が必要になった。こうした教訓を生かす意味でも、早期の整備が必要と考えたという。

空気を対流させ、風通しをよくする
 導入するのは75cmのビックファンで、大風量で広範囲への送風が可能なのが特徴。室内の両端から空気を対流させることで、熱気を溜めずに風通しをよくすることができる。選定にあたっては単相100Vで電源工事の必要がないことや、送風角度が調整できることを条件にしたほか、「大型扇風機を活用している学校や業者の導入例を参考に、大きさだけでなく、騒音と機能のバランスを含めて考えました」と説明する。
 また、避難所には子どもたちもいるため、設置した際の安全性に配慮して保護フェンスも併せて用意するとともに、体育館の出入り口を開けても虫などが入ってこないように災害時に設置できる簡易網戸の配備も進めている。

4月以降、全施設に納品予定
 今後の予定としては、機器が揃い次第、4月以降のなるべく早い時期に一括で各施設に納品する予定だ。「試運転も兼ねて、夏場に学校の授業や行事などで活用してもらえれば」と平時には教育活動での使用も視野に入れている。
 また、災害時の使い方としては「以前9月の暑い時期に消防署が250名規模の救命訓練を体育館でしたとき、用意した氷に大型扇風機の送風を当てて使ったところ、1人も熱中症を出さなかったという例がありました。そうした臨機応変な使い方もできると考えています」と期待する。
 なお、防災機能の強化という点では、備蓄や冬季対策として灯油ストーブを配備しているほか、マンホールトイレ等の整備も進んでいる。その上で、今後は地域との連携強化をより一層充実させていきたいと語る。もちろん、災害における被害を少なくするためには、こうした行政による「公助」だけでなく、市民1人ひとりが「自助」の観点から日頃の準備に努めてもらうことが大切になる。そんなお互いの意識が合わさってこそ、いざというときに学校施設が地域の拠り所として機能することになるのだろう。


高橋 健司 八王子市生活安全部防災課 課長

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