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世界10ヵ国の生徒と交流~博報日本語交流プログラム(前編)~

8面記事

企画特集

 異文化体験や国際交流を通じて、日本と海外の生徒がお互いの理解を深め、国際人として成長する―。公益財団法人博報児童教育振興会の「博報日本語交流プログラム」(後援=文部科学省)は、こうした機会の提供を目的に実施されており、今回で第10回を迎える。4月11日、世界10ヵ国11校から生徒と教師が来日し、2週間のプログラムに臨んだ。

交流は合同合宿からスタート

 同プログラムは、公募で選ばれた日本の中学校の生徒と世界各国から来日した同年代の子どもたちとが、主に日本語でコミュニケーションを取りながら相互理解を深める。まずは栃木・那須での合同合宿でお互いの文化の紹介やレクリエーションを通じてアイスブレイクを行い、その後、日本の中学校を訪問したり、生徒の家庭にホームステイしたりしながらお互いの国や文化について学び合う構成だ。
 合同合宿はまず顔合わせのアイスブレイクで始まった。7~8名のグループに分かれ、「新聞島」というレクに取り組む。じゃんけんに負けるたびに半分に折り畳んで小さくなっていく新聞紙に、グループ全員で乗り続けるのだ。子どもたちはまず日本語で自己紹介し合い、「肩を組んで支え合おう」「片足で立とう」などと日本語で相談しながら進めていった。
 この日本語でのコミュニケーションがプログラムの大きな特色。来日した生徒たちは、普段から日本語を勉強しており、コミュニケーションは基本的に日本語で行う。国内外の子どもたちに日本文化や日本語への理解を深めてもらうのが狙いだ。
 同時に、日本語が通じるため、大人の助けを借りずに子どもたちだけで意思疎通を図らなければならない。子どもたちにとっては、自ら考え、工夫してコミュニケーションを取っていくことが求められる。アイスブレイク後は夕食会となったが、ここにも教師は同席しない。表情はまだ固く、好きなスポーツや音楽の話題などでなんとか会話を盛り上げようと頑張るも、気まずい沈黙が流れる時間も長かった。

困難を乗り越えることが貴重な経験に

 外国の子どもたちはみな日本語を勉強しているとはいえ、個人差も大きく、日本語で言い表せないことは英語や母国語で伝えようとしてくる。まるで外国に留学したかのような環境で、戸惑う子どもたちも。日本から参加した跡見学園中学校の和田俊彦教諭は「大変だけど貴重な経験。意思疎通できなかったり打ち解けられなかったりした時、どうすればいいかを自分で考えて克服することが国際交流では大事だし、大人になって海外の人たちと働く時に活きる」と辛抱強く見守っていた。2日目は、海外の生徒たちが自国の踊りや歌を披露する文化交流から始まった。美しい民族衣装や独特なリズムの踊りに、みな目を奪われ、拍手を送った。その後の昼食会では宗教上の理由で食べられないものについて語り合うなど、異文化理解を図ろうとする姿も見られた。
 子どもたちに明らかな変化が生じたのは、昼休みのことだった。昼食を食べ終えた子どもたちがちらほらと体育館に集まり始め、バスケットボールやバレーボールを始めた。最初に始めた同じ国の子ども数名に次々と各国の子どもたちが加わっていき、ついには全員が参加した巨大な輪になった。

生徒自ら作り上げた企画で親睦を深める

 午後のレクで親睦はさらに深まっていった。大縄跳びでは、日本の子どもがルールを知らない外国の子どもに日本語で説明したり、みんなで相談したりして練習方法を工夫。本番では、「いいね!」「Good!」などさまざまな言葉が飛び交い、互いに励まし合った。1日目には緊張や不安で強張っていた顔が、いきいきとしていた。
 実はこのレクも前日のアイスブレイクも、今回の日本参加校である跡見学園中学校と中央大学附属中学校の生徒が企画し、運営を行った。中央大学附属中学校の三浦麻美子教諭は、「なるべく私は口を挟まず、子どもたちに任せました。初めて会う人同士の親睦が深まり、みんなが楽しめるにはどうすればいいか。企画を立て、試行し、改善できた。とてもいい経験になったと思う」と生徒たちの頑張りを称えた。生徒の一人は「最初は不安だったけれど、向こうから日本語で積極的に話しかけてくれて助けられた。今後は自分から積極的に話しかけていきたい」と意気込んだ。
 合同合宿を終えた子どもたちは、別れを惜しみながら後日の再会を誓い合った。寝食をともにした生徒たちには将来の夢について語り合う姿まで見られるようになっていた。

 5月27日号にて(中編)、6月3日号にて(後編)を掲載

<日本参加校募集が来月より開始!第11回博報日本語交流プログラム実施概要>

 ・実施期間=2020年3月11日(水)~3月26日(木)(予定)
 ・主な交流内容=学校訪問、合同合宿、ホームステイ、発表会・歓送会など
 ・日本参加校=中学校2校程度
 ・参加人数=合宿については各校より生徒20名と引率教師2名(予定)
 ・助成内容=プログラムの活動費(交通費・宿泊費・食費・施設利用費・保険加入費など)
 応募受付期間=2019年6月3日(月)~8月9日(金)
 詳細はホームページをご覧下さい。

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