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アメリカ人の生活と学校カリキュラム

18面記事

書評

生活に根差した学校に向けての次のステップ
ハロルド・O・ラッグ 著
渡部 竜也・斉藤 仁一朗・堀田 諭・桑原 敏典 訳
教師が主体的につくるべきと説く

 誰が、学校のカリキュラムをつくるべきか。それは、教師の仕事である。それが、著者の強い主張である。
 十人委員会などの少数の専門家が、教える教科やその内容を決め、教科書会社がそれに従って教科書を作り、教師が画一的な知識伝達型の授業をする。アメリカの学校教育では、そうした時代が長く続いた。19世紀末に、シカゴ大学の実験学校がつくられて以降、児童の活動を中心に据えた実験学校が各地につくられ、創造的な教育が展開された。
 本書が刊行されたのは、1936年。児童中心教育の学校が多くの成果を挙げた時代である。著者は述べる。新しい学校は、個人の全体的成長を最大化する点で児童中心的である。そして、好ましい環境の設定によって児童の成長が保障される点で社会中心的である。
 教師は人間と彼が生活している変化する社会についての研究者であるというのが、著者の持論である。そのような教師であれば、カリキュラムを主体的につくり、自らの教育活動でそれを実践できる。それはまた、自己を対象化して批判的に捉えることのできる教師でもある。芸術的活動にも通暁した教師という視点は、とてもユニークである。
 80年以上前に書かれた本書は、今の時代にも通じる大切な教育の視点を数多く示しており、新鮮である。
(6480円 春風社)
(都筑 学・中央大学教授)

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