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調査報告 学校の部活動と働き方改革

14面記事

書評

教師の意識と実態から考える(岩波ブックレット)
内田 良・上地 香杜・加藤 一晃・野村 駿・太田 知彩 著
職員室のタブーに斬り込む

 30年前の教え子から部活仲間と今もサッカーを続けている報告を受け、うれしく感じた。半面、わが息子は、部活担当からの「お前はいらない」の言葉で不登校となった。回顧して自分も部活に没頭した時、授業は適当だった。教育課程に部活は含まれていないが、管理職や保護者の期待に応えたい一心だった。
 子どものためにやるべきことは、山ほどある。時に、教師冥利だと自らそこにハマっていく。教育は無限である。だが学校にいる先生の人数と力は有限だ。一人一人の教員には、活動できる時間と体力に「限界」がある。職員室のタブーが解かれるには、職員室の外部の理解と介入が必要である。自己犠牲を美化する時代は、もう終わりにしたい。
 内容は学術的分析であるが、部活の魔力や妄想を覚醒させる分かりやすさがある。部活に魅入られた教師や管理職、行政、保護者の心に届いてほしい。課題の解決策を巻末に示している。それは唯一の有効打だろう。
 青年教師の熱と力を安易に部活へと仕向けた結果、指導主事等のバランスが偏り、部活系から引き上げられた顔ぶればかりの教委は少なくない。しかるべき指導陣がそろっているかを見ると、首長の価値観が如実に見える。学校教育にあって、部活は目的ではなく手段である。誠実で専門性に優れたバランスの良い教師に子どもは出会いたいのだ。
(670円 岩波書店)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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