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大学入学共通テストに挑む 身近な事象を数学的に捉えて表現

10面記事

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数学II・B
鶴迫 貴司 東山高校教諭(京都市)

平成30年度プレテストについて

 第2回試行調査の中から数学II・Bの第2問を取り上げる。問い方の特徴を把握し、普段の授業にも生かせることを他分野(三角関数)で考察したい。
 〔1〕は線形計画法と呼ばれる内容である。問題文を読解することから始まるのが新テストの特徴の一つ。この問題は長くもなく、短くもないので、読みながら立式する必要がある。いわゆる知識・技能および表現力がファーストステップになっている。
 解くためには、三つの量「食べる量」「エネルギー」「脂質」を同時に考えていかなければならない。次期学習指導要領の「解説」にも、そうした記述(二つ以上のものが動く)が各分野に存在し、試行調査においては他分野でも出題されている。軽視することはできない特徴といえる。
 複数のものが動く(変数扱い)と難易度も上がるが、表などを用いて情報を整理し、それをアウトプットするという形で対応したい。また、立式した不等式を用いて条件を満たすような整数値や「量」を見いだす力<判断力>も必要とされている。
 左の抜粋では省略しているが、〔2〕も教科書に記載されている内容であり、大局的には「変換」に関する出題である。順像法と逆像法がこの単元の要であることはいうまでもないが、今回はそれらが同時に出題されている。最後の設問は、オリンピックのマークが座標平面上で取り上げられ、軌跡の問題として出題されている。身近な題材を数学的な観点で解決していく力こそ、新テストで問いたい最大の特徴といえるだろう。

提案授業

 そもそも「数学」は、「数」を介して「学ぶ」ことであり、試行調査の問題作成方針や次期学習指導要領「解説」の内容いかんで、全般的なことが大きく変わることはないはずだ。ただし、これまでと問われ方が変化するため、数学的な内容に一歩踏み込めていない生徒には、要注意かもしれない。
 試行調査では第2問のように、複数の正解を漏れなく選択しなければならなかったり、結果を先に与えておいて、それを形づくる元の方程式は何か、を検証することが問われた。また、それに加え、日常生活に関連、または存在する事象を数学的な観点で解決する力も同時に問われる可能性が高い。こうした設問は、既存の問題集や参考書にはあまり見受けられないために目新しく感じてしまいがちである。
 だが、既に「解説」には以下のように具体的な事例が豊富に取り上げられている。これを踏まえ、三角関数の分野において日常生活型の問題を作問してみた。

<「解説」から一部抜粋>
 ・40名のクラスから3名のクラス代表を選ぶ選挙を行うとき、最低何票入れば当選するか。
 ・建造物や山、天体などを見込む角度や直接測定できない2点間の距離を求めること。
 ・具体的な少数のデータを通して、散布図、相関係数、標準偏差、分散の意味なども理解すること。
 ・指数・対数分野において、二つの数量の関係に着目する。例えば、バクテリアの増殖や放射性物質の崩壊、音の強さや星の明るさ、地震の規模を表す尺度。
 ・三角関数分野においても、二つの数量の関係に着目する。例えば、観覧車に乗ってある高さ以上にいる時間を考える。回転の半径や速さを変えたときに、ある高さ以上にいる時間の長さの変化の考察。
 ・半径が一定の球に内接する円柱の中で、体積が最大となる円柱の形状の考察。また内接する立体を円すいや正四角柱、正四角すいなどの別の立体に変化させる考察。また外側の球を半球や円すいに変えること。
 ・ハノイの塔や複利計算。

 以下の問題は下記URLを参照。
 https://www.kyoiku-press.com/wp-content/uploads/2019/06/20190617-10-00.jpg

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