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標語づくりで育てる情報リテラシー

18面記事

企画特集

約2万の応募から22作品が表彰された(総合通信局長賞11作品は各局で表彰)

「情報通信の安心安全な利用のための標語」
授業で取り組む学校も

 「2019年度 情報通信の安心安全な利用のための標語」(主催=情報通信における安心安全推進協議会、後援=総務省、文部科学省)の表彰式が6月3日、都内で行われた。本年度は全国から合計1万9595点の応募があり、式典では個人部門や学校部門の優秀作が表彰された。身近な情報モラルを考える機会として、標語づくりを授業に取り入れて毎年応募する学校もある。

「ネット依存」扱う作品目立つ

身近な経験が共感呼ぶ標語に
 「情報通信の安心安全な利用のための標語」は、標語づくりを通じてネット利用のルールやマナー、情報セキュリティの大切さを考えてもらうことを目的に実施されている。12回目となる本年度は、個人部門1万9537点、学校部門58点の応募があった。
 審査の結果、個人部門の総務大臣賞は「そのことば 打つのは自分 見るのは世界」(前田優衣さん・和歌山県)、学校部門同賞は「画面より 僕や私の 顔を見て」(広島県立福山葦陽高等学校)が選ばれた。
 前田さんは学校の春休みの課題で標語づくりに取り組み、情報モラルの授業や自身の利用経験から学んだことを作品化した。「普段からSNSを使っているので、発信する情報が多くの人に見られても大丈夫かどうか、常に意識しています」と話していた。
 学校部門で受賞した広島県立福山葦陽高等学校は、情報の授業に標語づくりを取り入れ、3年前から毎年参加しているという。代表作品は昨年度の1年生270人余りの標語から情報担当の教員が選定した。作者の増田瑠綺さんは、「自分の身近な経験と関連づけて考えた標語なので、多くの人に伝わってほしい」と受賞の感想を語った。

社会への啓発に受賞作品を活用
 式典冒頭、事務局を代表してあいさつした一般財団法人マルチメディア振興センターの小笠原倫明理事長は、「スマートフォンの利用率は小学生でも4割を超え、青少年にとって欠かせないコミュニケーションツールになっている。一方でネット利用のトラブルや依存症といった弊害も問題視されている」とした上で、「本標語募集活動は学校や家庭での標語づくりを通じて、ネット利用のあり方を深く考えるきっかけを提供するもの。皆さんのご支援をいただきながら今後も継続していきたい」と述べた。
 総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政第一課の梅村研課長は、受賞者への祝辞に続き、「ネットの安心安全な利用推進に国全体で取り組む一方で、利用者自身が理解を深めることも大切。青少年への有効な啓発の場となる本標語募集には総務省としても期待を寄せている」と話した。
 一般社団法人安心ネットづくり促進協議会の牧田和樹副会長は、「ネットの安全な利用のためには、一人ひとりがどう使うべきかを考え、リテラシーを身につけることが大切。皆さんが標語づくりを通じてネットモラルに関心を持つことには大きな価値がある」と受賞者に言葉をかけた。

利用者自身が使い方を考えて
 情報通信における安心安全推進協議会の篠原弘道会長(NTT会長)は、「今回の応募作ではネット依存が一つのテーマになっていた。社会の実情を見ながら標語づくりに取り組んだ様子が伝わり、啓発活動としての意義を改めて実感した」と印象を語った。
 また受賞者に対しては、「皆さんの標語が多くの人にネット利用を考えるきっかけを与えてくれることに感謝したい」とお礼の言葉を述べた。
 なお今回の受賞作品は、ポスターとして学校現場や企業などに配布される他、「e―ネットキャラバン」をはじめとする啓発活動でも活用される。


受賞者に祝辞を述べる篠原弘道会長

<総務大臣賞>

個人部門
 そのことば 打つのは自分 見るのは世界
 前田 優衣さん(和歌山県 和歌山県立桐蔭中学校)
 ネットに発信した情報は多くの人に見られると意識することは、個人情報を守る上でも大切です。スマホを使うとき、いつも頭に置いておきたいルールを簡潔に表しました。

学校部門
 画面より 僕や私の 顔を見て
 広島県 広島県立福山葦陽高等学校
 3年前から情報モラルの授業に標語づくりを取り入れており、今回も学年全員の作品から代表作を応募しました。自分の生活や経験と関連づけて、たくさんの人に考えてもらいたいテーマを標語にしました。(厚地一弘教諭、増田瑠綺さん)

<協議会長賞>

児童部門
 使い方 守れば情報 無限大
 井上 太陽さん(三重県 学校法人暁学園暁小学校)
 学校の先生から受賞の話を聞いたときはびっくりしました。家族も喜んでくれたのがすごくうれしかったので、来年も応募したいと思っています。

生徒部門
 きをつけて コウカイ(公開、後悔)するのは 君次第
 柏木 晴帆さん(東京都 渋谷教育学園渋谷高等学校)
 SNSアカウントが乗っ取られるトラブルを経験したことがあります。ネットに情報を公開する責任をみんなに考えてほしいと思い、この表現にしました。

一般部門
 またスマホ 子供の話は いつ聞くの?
 三浦 太郎さん(京都府)
 電車に乗っていたとき、実際に目にした親子の姿を思い出して考えたのがこの標語です。2万点近い作品から選んでいただいたことに大変驚いています。

<PTA関連賞>

日本PTA賞
 けいたいは べんりときけん おとなりさん
 志賀 心夏さん(新潟県 上越市立飯小学校)

 お互いの 守ろう友情 守ろう情報
 宮田 真子さん(富山県 射水市立新湊南部中学校)

全国高P連賞
 その言葉 相手に直接 言えるかな?
 井口 翔公さん(兵庫県 神戸学院大学附属高等学校[応募時])

全附P連賞
 気を付けて いいねの数だけ 見られてる
 松山 昂平さん(熊本県 熊本市立必由館高等学校)

<ネット社会の健全な発展に向けた連絡協議会特別賞>

児童生徒部門
 それいいの? みんなに見られて だいじょうぶ?
 岩崎 七彩さん(石川県 金沢市立緑小学校)

一般部門
 消せないよ ネットの書き込み 消しゴムで
 阿久津 みちこさん(埼玉県)

<総務省各総合通信局長賞>

北海道総合通信局
 ネットの海 二度と消えない 大こうかい
 市立札幌旭丘高等学校(北海道)

東北総合通信局
 メディア時間 減らして増える 家族の時間
 福島県会津若松市立大戸中学校(福島県)

関東総合通信局
 頼むから スマホじゃなくて 僕を見て
 千葉県立安房拓心高等学校(千葉県)

信越総合通信局
 のせた人 あやまったって もうおそい
 新潟県上越市立飯小学校(新潟県)

北陸総合通信局
 広めよう 人を助ける SNS
 北陸大谷学園小松大谷高等学校(石川県)

東海総合通信局
 世界に公開、一生後悔
 名古屋市立緑高等学校(愛知県)

近畿総合通信局
 危険が参ります 白線(ルール)の内側まで下がってご投稿下さい
 神戸市立渚中学校(兵庫県)

中国総合通信局
 僕を見て ママの子どもは スマホなの?
 山口県立宇部商業高等学校(山口県)

四国総合通信局
 その情報 誰かに迷惑 かけてない?
 愛媛県立宇和高等学校(愛媛県)

九州総合通信局
 SNS 気づいてあげて SOS
 大分市立碩田学園(大分県)

沖縄総合通信事務所
 インスタ映え いいねほしさに 事故多発
那覇市立松島中学校(沖縄県)

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