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小・中・高等学校における「実験器具」等の整備に、単年800億円を計上

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理科室には寿命を迎えた器具・機器も多い

理科機器を充実させるための施策

 授業に「観察・実験」を多く取り入れるためには、教員の適切な指導とそれをより効果的にする教材が必要であることから、理科室に備える設備機器を充実させる必要がある。しかし、理振法の予算が年々削られ、地方の学校では設備の予算がほとんどゼロというところもあることや、大きな予算があった昭和40年当時に整備した機器が寿命になりつつあるといった問題が生じている。
 そこで文部科学省では、「理科大好きスクール」「スーパーサイエンスハイスクール」のような重点化事業の規模を拡大し、全国的網羅的に行うために予算を増額したり、IT活用事業を生かした授業を行うためのインフラ整備を予算化したりといった手当てを拡充している。
 さらに、「新教材整備指針」の中に新学習指導要領に対応する教育条件整備策の1つとして、「理科教育等設備基準」に基づいた理科教材を新たに例示。ここに理科教育等設備整備費補助金の対象とならない実験観察・体験用教材を新規で盛り込むことで、2021年度までの10カ年総額で約8千億円(単年約800億=小学校・約500億円、中学校・約260億円、特別支援学校・約40億円)を計上し、小・中・高等学校における実験器具等の整備を充実させるよう図っている。

予算獲得に向けて声を上げよう

 それでも教材整備計画における教材費は、各地方自治体の自主的な判断で使用できる地方交付税措置となっているため、学校現場がこうした財源があることを理解した上で、自分たちの自治体に声を上げて要求していくことが望ましい。なぜなら、全国の市町村の半数以上の自治体で、国庫補助を生かした理科教育設備整備が実施されていない現状があるからだ。
 したがって、「財政状況が厳しい」のひと言で片付けられてしまわないためにも、教材整備指針に記載してある目安の数量(必要数)と学校の現有数とを把握し、必要な教材、足りていない教材をリストアップすること。その上で、自治体に対して計画的な整備を求めていく姿勢が大事になる。
 また、新学習指導要領では理科の見方・考え方を養うことはもちろん、器具や機器などを目的に応じて工夫して扱えるようにするなど、「知識及び技能」を育むことを求めている。その意味でも、各学校は基準となる理科機器を整備する必要があるといえる。
 なお、公益社団法人日本理科教育振興協会のホームページ(http://www.japse.or.jp/)では、理振設備についてQ&Aを設けるとともに、こうした国庫補助金活用について分かりやすく解説したパンフレットを用意し、申請手続きについてサポートしている。

教員の指導力も課題

 もう1つ、学校が「観察・実験」授業を取り入れるための課題は、10年未満の小学校教員の6割以上が「理科が苦手」と答えている現状があるなど、教員の指導力を向上することにある。せっかく観察や実験を行っても、教員自身に知識や技術が備わっていなければ、子どもたちの理科への興味・関心を引きだすことはできない。
 そのため、理科の専科教員を配置する自治体が増えており、現在では小学校高学年で3割以上の学校が学級担任以外の教員を充てるようになっている。また、一部の自治体では中学校の理科の教員免許状を持つ者を、小学校の理科専科教員として特別枠で採用するケースも生まれている。
 文部科学省でも、こうした動きに合わせて複数免許の取得や専科教員の拡充を推進しており、今後も教員の質の向上に向けて、免許状取得の弾力化や教員が取得しやすい環境整備に力を入れていく方針だ。

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