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学校施設の長寿命化・高機能化を促進

10面記事

施設特集

中長期的な視野で改修計画を

重要インフラの強化として3千億円

 近年多発している大規模災害の教訓を踏まえ、政府は重要インフラにおける防災対策を進める「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」を閣議決定。学校施設のインフラ整備の強化にも、約3千億円をかけて対策を進める意向だ。そこで本特集では、このような大きな改善期を迎えている学校施設を取り上げる。

政府の重点化プログラムに指定
 政府の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」では、学校施設等の耐震化や防災機能の強化、老朽化対策が重点化プログラムとして指定されている。こうした背景には、文部科学省が実施した「学校施設等の耐震性及び劣化状況に関する緊急点検(2018年10月末時点)」の結果で、安全性に課題がある学校施設が全国の半数近くを占めているといった現状があるからだ。
 そのため、公立学校施設の安全対策・防災機能の強化等の推進では、昨年度の第1次補正予算額 985億円、第2次補正予算額372億円に加え、2019年度は1千6百億円(昨年度682億円)を予算化。また、私立学校施設・設備の整備の推進にも前年度からプラス93億円となる195億円が計上された。
 これにより、学校施設耐震化(現在99・2%)の完全達成、屋根や外壁・内壁・天井等の非構造部材の耐震対策の推進、災害時の避難所としての役割も果たす学校施設の防災機能の強化(トイレ整備等)、長寿命化の整備手法への転換の推進などを早期に実現することを目指している。
 また、これらの改修にあたっては、時代にふさわしい教育の場としての高機能化や、快適性を高めることに留意することを必要としている。たとえば学校施設の木材利用や木質化、自然採光の活用、LED照明や省エネ設備などを取り入れたエコスクール化、教職員の働く場としての機能向上、無線LANなどICTを活用できる教室環境、熱中症対策としてのエアコンなど空調設備の整備、地域との連携が図れる施設などである。


学校の教室の半数はエアコンが未整備

実効性の高い長寿命化を計画する
 こうしたなか、インフラとしての学校施設における最も大きな課題になっているのが、老朽化が進行していることだ。現在の全国の公立小中学校施設は、子どもの数が増えた昭和40年代後半から50年代に建設された校舎等が一斉に更新時期を迎えてきており、一般的に改修が必要とされる経年25年以上の建物が全体の7割を占めるなど深刻な状態になっている。
 さらに、全国の地方公共団体には2020年頃までに個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)を策定し、PDCAサイクルに基づき、保全・再編を実施していくことが求められている。したがって、文部科学省では「学校施設の長寿命化計画策定に係る解説書」を取りまとめ、全国の教育委員会に計画的・効率的に保全・更新を行うよう通達を出している。特に、緊急的な老朽対策が必要な経年45年以上を経過した未改修の建物については、より早期の対策完了を求めているところだ。
 だが、多くの学校施設が一斉に更新時期を迎えることを踏まえると、たとえ改築から長寿命化改修への転換を図っても莫大な費用がかかるのも事実。そこで、学校施設の長寿命化計画を実行性の高いものとし、中長期的な維持管理等に関わるトータルコストを削減するための工夫を働かせることも大事になる。たとえば改修にあたっては余裕教室の転用による他の公共施設との複合化や、図書館やプール等の共有化なども、その一つになる。

ライフラインとなる“水まわり”
 また、老朽化に伴う改修の中でも、力を入れる自治体が多くなっているのがトイレの快適化だ。学校のトイレは子どもたちが一日に何回も利用する場所であり、快適な環境を用意することは精神面や健康面にとっても有益であると報告されている。加えて、学校は避難所に指定されていることから、小さい子からお年寄りまでの利用を想定する必要がある。
 しかし、全国の学校では未だに和式便器を使用していたり、暗くて不衛生に感じたりするトイレも多く、時代に合った環境とはとてもいえないのが実態だ。それゆえ、快適な教育空間に生まれ変わる改修のシンボルとして、トイレの洋式化や多機能トイレ、床のドライ化などのリニューアルを優先的に行う学校が増えている。
 同じように、学校施設では下水道設備の老朽化も課題になっている。したがって、災害時のライフラインとして進められるマンホールトイレの整備と併せて、耐震化を踏まえた下水道施設を新設・改修する自治体も多くなっている。何より、防災拠点として機能するためには、こうした〝水まわり〟の確保はまさに命綱になるからだ。

天井材など落下事故を防ぐ安全点検を
 一方、近年の大規模な地震では、天井材が落下するなど「非構造部材」の被害も発生している。このため、文部科学省では「学校施設の非構造部材の耐震化ガイドブック(改訂版)」を参考に、地震による落下物や転倒物から子どもたちを守るために耐震点検を実施するよう促している。
 「非構造部材」とは、柱、梁、床などの構造体ではなく、天井材や外壁(外装材)、窓・ガラスなど、構造体と区分された部材のことを指す。ちなみに、これまでの地震による落下事故では、学校施設の耐震化と比べて遅れている体育館や屋内プールなど、屋内運動場の天井材が落下したケースが多くなっており、2019年度までに約5400箇所の改修を予定している。本ガイドブックでは、これらに加えて照明器具やバスケットゴールといった細かな点検項目も挙げているのが特徴だ。
 また、普通教室の「非構造部材」の点検項目では、天井や内壁、窓・ガラス、照明器具。特別教室では収納棚、本棚、昇降口の下足箱などが点検項目に挙げられている。
 さらに、2018年の大阪北部地震でブロック塀の倒壊により人的被害が発生したことを受け、ブロック塀等の点検ポイントについて紹介した「追補版」も作成した。すでに安全性に問題のあるブロック塀等(約1000㎞)については、昨年度の補正予算により2019年度までに改修する計画を立てているところだ。
 文部科学省では、「非構造部材」はこのように多種多様であり、部材によっては耐震対策の方法が十分に確立されていないものもあるとした上で、地震時の安全確保のため、ひび割れなどの劣化状況や部材の取付け工法などを点検し、予防的な対策に結びつけていくことが重要としている。
 いずれにしても、これからの学校施設は時代に沿った機能と災害に強い施設づくりへ変革していくことが求められている。そのためにも各自治体には、まずは現状の問題をあぶりだし、優先順位をつけて計画的に整備を進めていくことが望まれている。


体育館のバスケットゴールも点検対象

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