日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

母語をなくさない日本語教育は可能か

16面記事

書評

定住二世児の二言語能力
真嶋 潤子 編著
母語・母文化継承で自尊心と学習意欲

 文科省が6月にまとめた「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム報告」に、「日本語や社会習慣」を学校教育で指導していくことの重要性だけでなく、「外国につながる子供たちの母語・母文化などの継承に配慮」を盛り込んだ。
 なぜ「母語・母文化支援」が必要なのか。本書を読むと得心がいく。
 母語教育の途上で来日した子どもは、母語も日本語も十分ではない「ダブルリミテッド」状態に置かれる。家庭での母語教育は、家庭によって、共働きなどの必要性といった時間的な余裕のなさから取りこぼされる現実もある。
 本書が提案するのは、学校での日本語教育と同時に取り組む母語を使った教育や、母国文化を取り入れた活動などである。
 母語が継承され、母国文化を理解していくことで、保護者への尊敬の念が生まれ、自身の自尊心の醸成につながり、日本語習得への意欲も高まる好循環を生むという。
 今年4月、入管法改正により新たな在留資格も誕生し、共生の新ステージを迎えた。
 4部構成、全9章の後に置かれた『「おわりに」に代えて』は、日本語担当教員として独自のアプローチをし、外国ルーツ児童の心の成長を促した女性教員(故人)の実践を、共に歩んだ日本語担当教員でもある夫による回想録である。本書の思いが凝縮している。ぜひ読んでもらいたい。
(6048円 大阪大学出版会)
(矢)

書評

連載