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多文化共生と人権 諸外国の「移民」と日本の「外国人」

16面記事

書評

近藤 敦 著
課題先送りは混乱招くと警鐘

 諸外国の「移民」と、日本の「外国人」とは、よく言ったものである。本書の読者として、一応は、国際関係学部の大学生のテキストとして、加えて、首長や行政幹部が必読すべきである。なぜなら、深く読み進めると日本が直面している重大な課題であることが実感できる。すなわち、この分野は、見ようとしなければ見えない内容なのである。
 まず、第4章「移民統合政策指数等における日本の課題」に紹介されているデータから目を通すと、世界における日本の位置が分かる。併せて働き方改革と叫べども、労働力不足やオリンピックという誘因が、必然的に多くの外国人を受け入れ、過酷な労働に充てている現状も見えてくる。ある意味、できれば「外国人」にとどめて「移民」とはしたくない国民性が見え隠れする。その臆する姿勢が、将来の混乱を予兆させる。気付いたらゆで上がっている「ゆでガエル」の例えのごとく、手遅れにならないうちに国民総関心事として各自の懐に引き寄せて、考え、議論し、行動すべき時ではないだろうか。
 構成は、15章なので大学講義としては扱いやすい。また巻末の「日本の多文化共生政策の課題と展望」から目を通されると本書を出版した意図が理解できる。歯に衣着せずに警鐘を鳴らす著者、すなわち日本人が一番苦手にしてきた分野なのである。
(2700円 明石書店)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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