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ライフラインをテーマに教員研修

企画特集

グループで検討した指導案を発表する

堺市初等教育研究会社会部会

災害への備えに目を向けて
 堺市初等教育研究会社会部会は8月19日に大阪・ハグミュージアム(大阪ガス)で定例会を実施し、ライフラインやエネルギーについての研修を行った。
 会ではまず、日本教育新聞社による解説で、新学習指導要領おける防災の位置づけや、多発する自然災害に対して国の考え方も自助を中心とした対応にシフトしていることを確認。そのうえで、災害時にライフラインが途絶えると困りごとが多いなかで、ライフライン事業者が日常的にどういった災害への備えをしているのか、目を向けるべきではと提案した。
 次に、大阪ガスが、主に地震対策として実施している取り組みを、学校に向けに無償配布しているテキスト教材「考える防災教室」(https://www.osakagas.co.jp/company/efforts/bousai/booklet/)をもとに紹介。耐震性の高いガス管への交換や、災害時に自動でガスの供給を停止するマイコンメーターの普及を行っていること、ならびに停止時の復帰方法などを報告した。昨年の大阪北部地震についても触れ、阪神淡路大震災と比較した際に、復旧までに掛かる日数や工程が大幅に削減されていることを説明し、事業者による絶え間ない努力の一端を示した。


大阪ガスが提供するテキスト教材「考える防災教室」

 これらを踏まえて、参加者はライフラインやエネルギーを授業にどう取り入れるかをグループワークで検討した。「阪神淡路大震災と大阪北部地震とを比較したデータに教材としての面白さがある」「どうしてガス会社はこれほどまで徹底して備えをするのかを知りたくなる」といった意見を出し合いながら、グループごとに一時間の指導案を考えて発表を行った。
 小塚益代・堺市立東深井小学校教諭らのグループでは、災害復旧時にフェイスブックやツイッターなどで大阪ガスに寄せられたユーザーからの「昼夜を通して復旧に励んでくださる大阪ガスの人には本当に感謝だ」といった声をもとに、災害時にガス会社がどういった働きをしているのかを考える提案を行った。

カリキュラムマネジメントも視野に入れて
 午後からは北俊夫・元文部省教科調査官による特別講演「社会科授業における『深い学び』とは」が行われた。
 北氏はまず、授業における「深い学び」を考える際に、「その対象が何か、例えば興味・関心の高まりなのか、認識の深まりなのか、はっきりすべきだ」と述べ、深い学びとは学習のプロセスそのものであると強調した。
 そして、「深い学び」を実現する授業づくりのために、

 (1)問題的な学習のさらなる充実
 (2)学び合い活動を通して学びを深める
 (3)「見方・考え方」を働かせる
 (4)「深い学び」の評価を工夫する

 ―という4つのポイントを挙げた。


「深い学び」について丁寧に解説する北俊夫氏

 続けて、「深い学び」を実現する指導計画の作成例を2つ提示。まず一つ目に、事例選択の考え方として飲料水・電気・ガスの単元を取り上げ、「なぜ、この事例が選択になっているか考えることが大事」と問題提起した。北氏は「この単元で捉えさせたマスターキーは『事業者による安全で安定的な供給』である」と解説し、「飲料水の学習を生かして電気やガスについての学習展開も可能になるのでは」と語った。
 二つ目には、カリキュラムマネジメントの視点から自然災害の単元を取り上げ、この単元でライフライン事業者の取り組みについて触れることで、飲料水・電気・ガスの単元とつなげて考えることができると強調した。そして、こうした指導を支援するツールとして、日本教育新聞と日本ガス協会が作成した授業支援パッケージについて紹介した。
 研修を受けて社会科部会の会長を務める濱本教行・堺市立日置荘小学校校長は「南海トラフによる大地震が近い将来発生すると言われているなかで、ライフラインの確保を伴う防災教育や横断的な社会科教育は必須で、大切にしていきたい研修だ」と語った。
 会ではこの後、世界遺産に登録された百舌鳥・古市古墳群についての取り組みを堺市役所世界遺産推進室より紹介された。

「住みよいくらし」授業支援パッケージ
http://www.kyoiku-gas.com/

「自然災害からくらしを守る」授業支援パッケージ
https://www.lifeline-kyoiku.com/

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