日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

第6回夏の教育セミナー 大学入試改革の動向見据え教科指導のポイントを探る

10面記事

Topics

東京会場で講演する安河内哲也氏

日本教育新聞社・(株)ナガセ主催
分科会から

 大学入試改革をテーマに8月1日から21日まで全国12都市で開かれた第6回夏の教育セミナー(主催=日本教育新聞社、(株)ナガセ)。教科ごとの分科会では「国語」「数学」「英語」に加えて、今年は「探究」を開設。先進校の関係者が実践や指導体制を解説した。大学入学共通テストや新学習指導要領に向けた授業づくりのヒントを得ようと、多くの高校教員らが参加し、ワークショップなどで交流した。

英語
「自律型学習者」の育成を
スピーキング取り入れる


山本 崇雄氏(新渡戸文化小・中、高)

 新渡戸文化小・中学、高校(東京都中野区)の山本崇雄教諭は「入試が目的になると社会の変化に気付かなくなる。社会の変化を肌で感じる必要がある」と英語を学ぶこと、教えることの意義を確認した上で、大学入学共通テストの試行調査問題に基づく授業づくりを提案した。
 共有すべき最上位目標として、「リアルな社会で自律してハッピーに生きていく自律型学習者の育成」を挙げ、その前提で入試も突破できる力を付けることが必要だとした。
 生徒の主体性を育むことの大切さも強調。学んでいく上で「大学や職業を目標にしてはいけない」とし、例として医師になることを目指すのではなく、なぜ医師になろうとするかを明確にすることが大切だとした。教員に対しては、「志を育てる発問をしよう」と呼び掛けた。
 授業・テストを改め、「生徒をリアルな社会につなぐ」こともポイントになると指摘。2017年度の試行調査問題からは、遊園地の混み具合を示す英文ウェブサイトを読んで質問に答えるものを挙げて、「外国のウェブサイトを見て旅行プロジェクトをつくる授業をするとよい。生徒は英語を読み取ろうとするようになる」などと述べた。


安河内 哲也 氏(東進ハイスクール・東進衛星予備校)

 東進ハイスクール・東進衛星予備校講師の安河内哲也氏は、ICTツールの効果的な活用やスピーキングを取り入れた活動型授業への移行の重要性を訴えた。
 安河内氏は、高校での4技能の向上に向けた授業展開を中心に講演。スピーキングを積極的に授業に取り入れる学校は、リスニングやリーディングの平均スコアが高いという調査の結果にも触れ、「高校までは読解をしっかりやればよい」という考えには異を唱えた。
 当日は来場した教員同士で協力して情報を補完し、絵を完成させるペアワークを実施。問題を理解して終わるのではなく、自分の考えを相手に言葉で伝えるインプットやアウトプットを行うことで、効果的な発信力や創造力の向上につながることを体感した。
 授業に役立つICTツールの活用の様子も公開した。授業の効率化や課題の可視化・明確化につながることを伝え、教員の働き方改革にも効果があると訴えた。分科会の最後は「令和の時代は答えを選ぶのではなく、つくる力が必要」と強調した。


有嶋 宏一 氏(鹿児島県立甲南高)

 鹿児島県立甲南高校の有嶋宏一教諭は、生徒同士がペアやグループをつくり、話し合いながら進める授業例を紹介した。
 リスニングでは、教員やALTが英文を読み、聞き取れた単語などを生徒同士のグループで共有する。「聞き取りの形式にすることで生徒たちの方から何度も英文を聞きたがるようになった。生徒の間で文法の話や単語の話をするきっかけにもなる」と話した。
 聞き取りだけでは難しい場合のために、ヒントを書いた紙を用意し、教室の隅に置き生徒が見に行って記憶するという方法を取る。メモを取らず、忘れたら何度も見に行くことで覚えやすくなるという。授業では、英検準2級程度の問題を扱っている。
 リーディングでは、設問の長文中に出てくる単語二つと疑問詞を提示し、疑問文と答えを一人一人に作ってもらう活動を紹介した。疑問文が苦手な生徒への対策と、長文内容を理解する力を高めるために行っているという。
 大学入学共通テストについて有嶋教諭は「リーディングとリスニングを問わず、長い話を聞いたり読んだりして、その表などの空欄を埋めながら内容をまとめる問題が出題される傾向がある」と解説。その形式に慣れるため、簡単な図を使った指導方法を示した。
 生徒が授業に主体的に取り組むためには、「問題の問い方を工夫することで生徒のやる気を引き出すことができる」と話した。


武田 誠 氏(宮城県仙台第三高)

 宮城県仙台第三高校の武田誠教諭は、大学入学共通テストの試行問題に見られる特徴を踏まえ、「コミュニケーション英語」などでの取り組みを紹介した。
 4技能のうち特に「読むこと」を扱う授業では、生徒たちが教科書以外の英文にも触れる機会を多く設定し、さまざまなテキストの種類に慣れさせるようにしているという。
 300語以上を目安に、まとまった英文を読む練習も取り入れている。一方で「読んで終わりにしないことが重要。英語を嫌いにさせないことにもつながる」と指摘した。
 英文を読んだ後には内容について考える習慣を付けさせるように「What do you think?」と問い掛けている。1年生では自分の意見を中心に、2年生で根拠となる事実も併せて考えるよう指導する。
 英語の授業を構成する際のポイントも示した。

 (1)どのような言語能力を身に付けさせるか
 (2)どのような言語活動ができるか
 (3)4技能5領域のバランスはどうなっているか
 (4)自己の問題に落とす活動が含まれているか
 (5)相互的な活動が含まれているか
 (6)さまざまな見方・考え方ができる活動になっているか

 ―を意識するとよいという。
 武田教諭は、共通テストに向けた特別な対応を考えるより「普段の授業で行っていることが生徒にとって一番の対策になる」と話した。


富永 幸 氏(滋賀県立膳所高)

 滋賀県立膳所高校の富永幸教頭は、大学入学共通テストと新学習指導要領を見据えた授業改善をテーマに、授業での活動例を紹介した。
 「英語表現」の授業では、リスニング→スピーキング→ライティングの順番で活動を設定。1人の生徒のスピーチを他の生徒たちが聞き、要約を書く。その後、スピーチのテーマについてペアで話し合い、それぞれが意見を作文にまとめる。4技能を統合的に高める活動だ。
 生徒たちはスピーチを聞く際にメモを取り、要約づくりの参考にする。自信が持てない生徒のために、キーワードを黒板に書くとよいという。富永教頭は「生徒の力の幅に応じて、生徒自身で活動をコントロールできるようにしている」と話した。
 「コミュニケーション英語」の授業では、読んだ文章の内容を分かりやすく言い換えて相手に伝える「リテリング」を取り入れている。ただ、生徒たちが文章全体を理解せずに、キーワードの前後の文を中心に読むという課題が見られたため、まずは文全体の構造を図にさせ、短時間でポイントをまとめられるように活動内容を改善した。その結果、教科書の英文と同じ表現を使用している割合が減ったという。「生徒がパラフレーズする技能を習得することで、多様な表現ができるようになった」と富永教頭。長文理解や英文和訳などの入試問題にも有効だと指摘した。

数学
思考させる課題を与えて
日常生活扱う出題増える


例題解説する東山中学・高校の鶴迫貴司氏=福岡会場


酒井 淳平 氏(立命館宇治中・高)

 立命館宇治中学校・高校(京都府宇治市)の酒井淳平教諭は、高校では、汎用的な力として、さまざまな場面で活用可能な「思考力・表現力・判断力」「主体性や協働する態度」を意識することが必要だと説明した。
 大学入学共通テストでも「いろいろな方向で論理的に考える力」や「根拠を持って何かを判断している力」を問う問題が出されようとしているが、酒井教諭は自身も数学教育で取り組みたかったことだと指摘した。
 これからの数学教育で大切なこととして、酒井教諭は「私たちが探究する、日常生活で活用される数学に関心を持つこと」「授業はHOWからWHYへと変わること」を挙げる。そうした、生徒が発見し、表現する必要性を感じる授業をするためには、生徒の様子を把握し、適切な「思考させる課題」を与える必要があるとした。


鶴迫 貴司 氏(東山中・高)

 東山中学・高校(京都市)の鶴迫貴司教諭は、大学入学共通テストの過去2回の試行調査の分析と新学習指導要領の解説に基づいて自身が授業で扱っている題材を紹介した。問題文の二人の会話を手掛かりにして考える三角比による高さの測量問題などを示した。
 また、試行調査の出題傾向などから分析し、三角関数を使って解く日常生活場面の問題は今後、実際の大学入学共通テストで出題される可能性がある、と話した。
 鶴迫教諭は、国公私立の難関大学が入試で問おうとしている力を

 (1)定義と基礎の定着が図られているかどうか
 (2)典型問題を通して培われる処理能力が一定以上の水準に達しているかどうか
 (3)見たこともないような問題に対し、どのようなアプローチができるかどうか

 ―に大別できると指摘する。
 授業では対応する力を養うため「生徒が自分一人で考えることを奪わないように考える素地を残す」「教科書の例題に変化を与える」などの工夫がいると説明。講演の後半は自作の例題の解法や指導法を参加者とともに考えた。


堀内 陽介 氏(広尾学園中・高)

 広尾学園中学校・高校(東京都港区)の堀内陽介教諭は家庭学習で基礎を確認し、授業では応用問題に取り組む反転授業の実践について話した。反転授業の具体的な展開の方法を示した上で、授業を議論から始められること、授業が生徒同士で考えを共有する場になること、授業で話したり書いたりするアウトプットに割く時間を多く取れること、などのメリットを挙げた。
 長期休暇期間に出す課題例も紹介した。指定の参考書の中から生徒が自分で取り組む例題を選び、難易度を表す星の数が100個以上になるように挑戦させたという。
 堀内教諭は生徒が授業に向かう態度について「教員が生徒に教えるのではなく、ともに考えるという姿勢で数学を楽しみながら授業に取り組むことが大切」と指摘。「生徒自身が意欲的に学ぼうとする『主体的学び』の状態になることで、知識・技能を超えた資質・能力が身に付く」と話した。


木内 保 氏(日本大学櫻丘高)

 日本大学櫻丘高校(東京都世田谷区)の木内保教諭は、大学入学共通テストに向けた試行調査問題などを使い、そこで求められる学力について説明した。
 木内教諭は学習指導要領の改訂に伴い、日常生活の事象を扱った数学の問題がさらに多くなることを指摘。共通テストの問題作成は「思考力、判断力、表現力」や「問題解決の過程」などを重視していることを強調した。
 「では、教師はどう教えていけばよいのか」と参加者に投げ掛けた木内教諭。自身が用意した複数の問題を使って解説し、「解法の判断基準を大切にしてほしい」と述べた。また、作問に関わるポイントを説明する場面もあった。
 最後に「教師一人一人のより良い実践が生徒に希望を与える」と語り、「教科書をベースに内容を精査し、生徒がさまざまな考えを生み出していくことが大切」と述べた。


法貴 孝哲 氏(清真学園高・中)

 清真学園高校・中学校(茨城県鹿嶋市)の法貴孝哲教諭は、これから求められる学力について講演した。現在の日本の教育では、日常生活や社会の出来事を数学的に処理する能力を伸ばす教育が不十分だと指摘する。このような数学的思考を鍛えるには、振り返りを伴う練習や、驚きなどの刺激、挑戦や失敗が大事にされる環境が必要だと話した。
 新学習指導要領で重視される「主体的・対話的で深い学び」についても話した。法貴教諭は、主体的な学びの実現には優れた教材と生徒たちへの理解が、対話的な学びの実現には適切な課題とフィードバックの提供が必要だとし、深い学びとは、推論や論証をし、概念や原理を理解することだと説明した。
 また、アクティブ・ラーニングにも言及し、「対話型の授業ではなく、深い理解につなげるための、生徒たちの状況を踏まえた柔軟な授業デザインのことを意味している」と分析。実現には、教師が教科の専門性を高めると同時に、子どもの理解に努める必要があると述べた。


平井 恒 氏(東京都立八王子東高)

 自分で考えない。すぐに答えを求めようとする。答えが出れば、もうどうでも良い―。「この課題を解決しようとすることが、そのまま共通テスト対策につながる」
 東京都立八王子東高校の平井恒主任教諭は講演でそう話し、生徒自らが考えようとするような問題例を提案した。
 そこでは、数学的条件を現実の世界に落とし込んで考える問題や作図分野で「なぜこれが正解なのか」を考える問題などを紹介し、「それぞれにメリットとデメリットがあるが、ときどき取り入れると授業に変化が出る」と話した。
 アクティブ・ラーニングが重視されるようになり、グループ学習やディベートに取り組む学校が増えたが、「形式に慣れてくれば、できる生徒の答えを待つ生徒も増えてきて、講義型と変わらない」と平井主任教諭。講義型を基本にしながら、生徒に思考させる活動も取り入れ、授業に変化を加えることが重要だと指摘した。


村形 政信 氏(東京都立西高)

 東京都立西高校の村形政信主任教諭は冒頭で大学入学共通テスト試行調査の「思考力・判断力・表現力」を見る問題を分析した。2018年度の問題は前年度よりも洗練されたことに加え、高校段階で展開してほしい授業の姿やメッセージが明確化されたと指摘した。
 問題を通して見たい力は

 (1)身の回りや社会的事象を数学の問題として表現する
 (2)問題の本質的部分を抜き出し、求めるべきことを明確化する
 (3)自分の持っている知識を使って、答えを導く
 (4)出てきた答えを検証し、統合的、発展的に考える

―の四つではないかと語った。
 また学習指導要領が求める主体的・対話的で深い学びを授業で展開する工夫も紹介した。
 村形主任教諭は、これは「時々行うだけの特別な授業」ではないとし、主体的な学びを促すには生徒に「予想」をさせる、対話的な学びは「比較」をさせることがその第一歩になるのではないかと提案した。対話には他者だけでなく、自己も含まれていることも強調した。

国語
教材ありきの授業に注意促す
教員が主体的であること


札幌会場で講演する中央大学附属高校の齋藤祐氏


齋藤 祐 氏(中央大学附属高)

 「学びに向かう力をどうハカるか」をテーマに講演したのは中央大学附属高校(東京都小金井市)の齋藤祐教諭。同校が取り組むコンピテンシー(資質・能力)育成の取り組みを紹介した。
 テーマにある「ハカる」という言葉には二つの意味があるという。一つはどのように測定するかの「測」、もう一つはどう育成するかに関わる教師側の仕掛けを意味する「図」を指す。
 生徒のコンピテンシーを測ろうと、開発したのがアンケート回答による自己評価システム「Chufu―compass」。育みたい資質・能力を「考える力」「やり遂げる力」などの七つに分類し、生徒自身が自分に足りない力などをメタ認知できるのが特徴だ。
 このアンケートには自由記述欄も作った。「自分が持っているもの、足りないものを第三者から指摘されたような感覚」といった感想があったという。
 さらに、国語科でコンピテンシーを育むための手だての一つとして紹介したのが、論文作成時に使用する「探究マップLight」。「課題設定」「情報収集」などの「探究」の六つのエッセンスを取り入れたもので、付箋を貼り替えながら問いを深めることができるワークシートになっているという。


湯尾 健児 氏(三田国際学園中・高)

 三田国際学園中学校・高校(東京都世田谷区)の湯尾健児校長は、大学入学共通テストの試行調査での出題傾向から、評論、詩、古典など複数資料が利用され、しかも資料の組み合わせ方が固定化していないと分析した。特に、学習指導要領・国語の解説編にある「実用的な文章」として挙げられている会議の記録、説明書、法令文などからの出題の可能性に触れた。
 湯尾校長は、試行調査問題を通して、

 (1)言語変換力(表現力)
 (2)同値情報を別の資料から取り出す力(判断力)
 (3)語句と語句などの関係を捉える力
 (4)全体を俯瞰して文章を捉える力

 が付くよう指導する必要があると話す。
 こうした力を付けるため、「相互通行型授業」、いわゆるアクティブ・ラーニング型の授業を取り入れた。教師は生徒が考えることを支援し、その際、「トリガークエスチョン」を重視。個人で考えさせ、グループ、全体で考え、もう一度個人に返る。素材も過去の入試問題に近いものを使い、授業を展開しているという。


岩田 真志 氏(東京都立西高)

 東京都立西高校の岩田真志教諭は、2018年度の試行調査問題を使い、設問ごとに解説した。
 これまでは答えを導き出すのに、出題文からの引用体を用いるよう指導してきたが、記述式などは自分の意図が読んだ人に伝わることが大切ではないかと指摘。「教材ありきの授業では、教材の内容を教えるだけの授業になりやすい」と注意を促した。
 試行調査問題で出題されるテキストの割合について、連続型60%、表・グラフなどの非連続型30%、混成型や複合型が各5%で構成されると分析。設問の内容は探究・取り出し25%、総合・解釈50%、熟考・評価25%などになり、従来の総合・解釈に加えて、熟考・評価も問われ、これまでの出題とは異なるなどと話した。
 普段の授業では、記述答案の提出・共有、資料の配布、和歌の発表などに、授業支援ソフト・アプリの「ロイロノート・スクール」を活用。また、読み取るのが難しい教材も、表現の対比や二項対立など文章の構造分析を取り入れることによって、初読の理解から作品の理解が大きく変わっていく効果に言及した。


河口 竜行 氏(渋谷教育学園渋谷中高)

 渋谷教育学園渋谷中学高校(東京都渋谷区)の河口竜行教諭は、生徒が主体的に学ぶことができる環境をつくるために「教員が主体的であること」の重要性を強調した。その上で「なぜ国語科の教員になったのか」「生徒にどう育ってほしいのか」という意識が、生徒の主体性を引き出すための土台になっていると参加者へ語り掛けた。
 河口教諭は「対話の練習を重ねる」「宿題、ドリル学習を減らす」などに取り組む中で、生徒が「成績を隠さないようになる」「志望校などの夢を口にできる」「助け合える」ようになったと紹介。生徒が教え合う環境ができたという。
 反対に、授業時間増などで生徒・教員に余裕がなくなってしまうと、主体性が失われ学力にも悪影響が出るとの見方を示した。
 また、非認知能力について、「『教える』という発想では育たない」と話し、生徒が積極的になれるよう勇気づけることを呼び掛ける。
 河口教諭は、大学入試改革への対応は、学校が変わるチャンスとして捉え、生徒・教員がともに目標に向かっていく姿勢を持つよう参加者に訴えた。


石原 徳子 氏(神奈川県立多摩高)

 神奈川県立多摩高校の石原徳子総括教諭は「考えるのが好きになる」国語の授業をテーマに、大学入学共通テストの問題作成方針や試行問題の狙いに基づく授業実践を報告し、「生徒たちは考えることが好きになれば、生涯にわたって主体的に学び続けるのではないか」と話した。
 2018年度の試行問題の第2問では、著作権に関するポスターや条文、説明文を題材に、実用的な文章と論理的な文章を読み取り、それぞれを関連付けながら判断する力が問われた。
 石原総括教諭は法令文などには慣れが必要とした上で、目的は実用文を出題すること自体ではなく、論理的に読んだり考えを組み立てたりする力を見ることだと指摘した。
 授業では、遺伝子操作についての資料を読み、倫理的に許される範囲を考えて話し合う活動を実践。世の中で起きていることや他教科の学びと国語の学習につながりを持たせられるよう工夫したという。
 分科会の終盤には「生徒がノリノリになる言語活動」について参加者がアイデアを出し合う時間も設けた。「手順を明確にし、『なぜそう考えたか』を発表する機会を設けておけば、生徒たちは安心して活動できる」と話した。


遠藤 祐也 氏(山梨県立甲府東高)

 山梨県立甲府東高校の遠藤祐也教諭は「今回の教育改革の中心は高校で、特に国語科は最重要と位置付けられている」とした。また、新しい学習指導要領では、学習内容の改善・充実に向けた「学習の系統性の重視」「授業改善のための言語活動の創意工夫」が必要と話した。
 大学入学共通テストの試行調査でも、思考力・判断力・表現力を問う問題が作られ、「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定がされていると解説した。
 こうした中、授業改善のポイントとして「既存の教材観・授業観・テスト観からの脱却」を挙げた。
 持続可能で生徒のやる気を高める取り組みとして「育成する資質・能力が明確になった見通しのある指導目標の作成」「教科担当と生徒、生徒同士の信頼関係の構築」「生徒が自分の変容を実感できる授業づくり」が求められるとした。
 「育成する資質・能力が明確になった見通しのある指導目標の作成」では、3年間でどんな力を持った生徒を育てるのかという指導目標を校内の関係者で考え、共通認識を持つ実践を紹介した。
 「生徒が自分の変容を実感できる授業づくり」では、学習履歴シートの活用について述べた。

探究
問いを立てる力を養う
課題に気付く「生産者」へ


探究のポイントを解説した茨城県立並木中等教育学校の中島博司氏=福岡会場


長谷 圭城 氏(奈良女子大学附属中等教育学校)

 2005年にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け15年間にわたり探究的な活動をしてきた奈良女子大学附属中等教育学校。
 長谷圭城教頭は探究活動の充実に向けた同校の歩みや価値観を紹介。特に心掛けてきたこととして

 (1)教育環境のデザイン(探究活動に合わせた学校改革)
 (2)奈良女子大学との高大接続カリキュラム(双方協働による授業づくり)
 (3)SSHのカリキュラム開発と文理の枠を超えた少人数対話型の学校設定教科「コロキウム」の実施

 ―などを挙げた。
 SSHで15年間継続してきたこととしては、中学生も対象に入れ、1~4年生までは「自然科学リテラシー」を育成し、5年生から専門性を磨くといった考え方を示した。


北尾 悟 氏(奈良女子大学附属中等教育学校)


藤野 智美 氏(奈良女子大学附属中等教育学校)

 別会場でも同校による発表があり、北尾悟副校長は、日本史で導入した探究学習や、新たに始まる「総合的な探究の時間」の授業づくりを紹介。続いて同校の藤野智美教諭がSSHを生かした探究の授業について語った。
 北尾副校長は、各教科で探究の時間を設けることの重要性を強調。日本史の各単元で生徒のどのような力を伸ばそうとしているか説明した。「総合的な探究の時間」に関しては、問いを立てる力を養うことが大切なのではないかと語った。
 藤野教諭は、課外活動として設けているサイエンス研究会の生徒が普段の授業で多くの生徒と接点を持てるようにするなど、「探究のモデル」を広める実践についても話した。


中島 博司 氏(茨城県立並木中等教育学校)

 「高校の授業をもっと楽しくしよう」。会場の参加者にそう呼び掛けたのは茨城県立並木中等教育学校の中島博司校長。「アクティブ・ラーニング」(AL)と「探究」について解説した。
 中島校長は、自らの授業改善をメタ認知する「AL指数」の取り組みなどを紹介した後、「『探究』のポイント6」について語った。同校の学校設定科目「理数探究」は、テーマごとに割り振られた「縦割りゼミ」(全26グループ)で学習に取り組むのが特色。「教師はファシリテーターに徹することが大切」などと語った。この他、80文字以内で振り返りを書く「R80」や、深い学びの実現に向けた「TO学習」(縦割り学習)の取り組みなども紹介した。


稲垣 桃子 氏(立命館宇治中・高)

 文科省の研究開発学校の指定を受け、「総合的な探究の時間」に取り組む立命館宇治中学校・高校(京都府宇治市)。自校の「コア探究」について、酒井淳平教諭と稲垣桃子教諭が「探究」の課題設定→情報収集→整理・分析→まとめ・表現のサイクルを用いて報告した。
 探究導入の目的は、生徒を「与えてもらう」という「お客さま」から、課題に気付き自ら取り組む「生産者」の育成への転換にある。その手だてとして、各教科の教員がまず自分の教科を学ぶ意義が分かるような問いを立て、質疑を通して解説。その後、生徒が問いを立て、学ぶ意味を探っていく。
 この授業に取り組み、将来の見通しが持てない生徒が減った。教員が他教科の魅力・見方に気付き、チームとしての雰囲気が醸成されてきたという。


岩田 史樹 氏(島根県立出雲高)

 島根県立出雲高校の岩田史樹教諭は、課題研究の指導体制の検討経緯を紹介した。同校では生徒が班を組み、複数の班がさらにゼミに所属するという体制で研究を進めている。各班に「アドバイザ教員」が付き、課外での指導を担当。ゼミ別の活動について指導・管理する「ゼミ主担当教員」も置いている。
 この指導体制について岩田教諭は、過去に「アドバイザ教員」が指導する場を課外に限ったことで「授業内の様子が分からず、指導が後手に回りやすい」などの課題があったことを説明した。そこで「アドバイザ教員」の選出方法を変え、時間割を確認して、空き時間と重なる教員を選ぶこととした。希望すれば課内の授業も担当できるようにし、より柔軟な指導体制に見直したなどと話した。


廣瀬 志保 氏(山梨県立吉田高)

 「りんごを見て、何を思いますか?」
 山梨県立吉田高校の廣瀬志保教頭は、同校の総合的な探究の時間で行っているオリエンテーションを会場の参加者に向けて実践した。冒頭では連想を重ねて課題設定のヒントとする方法を紹介した。
 調べ学習に対して、探究学習では「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・表現」を繰り返すプロセスが必要だと指摘した廣瀬教頭。生徒にとっても部活動などの場面で日常的に実践していることだと強調した。
 また、課題設定時の生徒への声掛けを参加者とのロールプレイで実践し、「ウィル」(探究したい気持ち)、「ニード」(必要性)、「キャン」(可能性)のそれぞれの接点から課題を探すことを勧めた。


平井 啓明 氏(京都市立堀川高)

 京都市立堀川高校の平井啓明副校長は、学科や文理にかかわらず1、2年生で必修にしている同校の「探究基礎」の授業について紹介した。
 探究基礎では、課題設定や課題解決の能力を高めることを狙いに、1年半にわたる学習を3段階に分けている。1年生前期では情報の集め方や論文の書き方を学び、後期には分野別の少人数講座(ゼミ)に所属してデータの分析や文献の講読に取り組む。まとめとなる2年生前期には個人でテーマを設定して研究し、発表会を開いたり論文を作成したりする。
 探究学習と併せて知識習得型の学習も重視し、相乗効果が見られるという。平井副校長は「学校の役割は知識に裏打ちされた経験をさせること。そのための『型』を身に付けさせることが探究の目的だと考えている」と話した。


岩見 理華 氏(神戸大学附属中等教育学校)

 学校創設以来、探究的な学習を「Kobeポート・インテリジェンス・プロジェクト」(KP)として取り入れてきた神戸大学附属中等教育学校は1・2年段階から「探究入門」を履修させ、卒業年の6年では最終論文を仕上げる「卒業研究」につなげている。岩見理華指導教諭(英語科)が授業実践について報告した。
 2015年度にスーパーグローバルハイスクールに指定され、3・4年合同グループ学習にしていた「課題学習」を、3年は個人研究の「課題学習」に、4年では「課題研究I」の卒業研究入門に位置付け、探究的スキルを身に付ける内容に変えた。5年は「課題研究II」、6年は「課題研究III」とし、自分で問いを立てながら卒業研究に取り組むようにした。
 個人での研究である点、リサーチリテラシーを育成して大学での研究につなげるよう意識している点に特徴がある。岩見指導教諭は研究活動を進める上で、生徒の主体性、メタ認知、批判的思考力の必要性と重要性を強調した。

Topics

連載