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止まった刻(とき) 検証・大川小事故

18面記事

書評

河北新報社報道部 著
災害列島に多くの課題を示す

 2011(平成23)年3月11日午後2時46分、東北地方太平洋沖地震で津波発生。宮城県石巻市立大川小学校で児童70人が死亡、4人が今も行方不明(自宅被災1人)、教職員11人中10人も犠牲となる。地元紙の河北新報は、この経過を詳しく連載(新聞協会賞受賞)。その書籍化が本書。教育に関わる人が読んでおきたい本だ。
 「プロローグ葛藤―生存教諭の3・11」で、この本はスタート。第1章は、3月11日の時系列で、「そのとき、何が」起きたかを詳しく伝える。1 激震、2 迷い、3 緊迫、4 漆黒、5 地獄と、当日の悲劇の状況を伝える。“そのとき”、あなたの教え子やあなた自身の命を救うために、どうしたらいいか。
 第2章は、「真相は、どこに」である。1 追及―遺族たちの年月、2 教訓―控訴審判決は何を問うたか、3 波紋―学校の事前防災―と、同日以後の悲しい状況が伝えられる。そして、第3章が「災害列島の学校で、いま」となる。1 明暗―何が生死を分けるのか、2 模索―東南海の学校と教育委員会で、今後の検討・対応課題が、数多く示されている。各章の資料、コラムが読み手の役に立つ。
 なお、唯一助かった当時教務主任の男性教諭は震災後にPTSDを発症し、以後は休職。この悲劇を繰り返してはならない。エピローグは、「『未来をひらく』ために」だ。
(1836円 岩波書店)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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