日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

世界基準の教師の育て方

14面記事

書評

NEW TEACHER INDUCTION 新任教師を成功させる育成プログラム
アネット・ブロー、ハリー・ウォン 著
稲垣 みどり 訳
安心と希望与え離職防ぐ取り組み

 初任者を指導するベテラン教員の力量はさまざまである。残念ながらピンキリということだ。また、校外研修後に感動を報告してきた新採は数少ない。着任翌日から休む教職大学院卒や1年以内の離職者の後任探しで苦慮したことを思い出す。
 本書には、日本の現状から即刻検討し取り入れるべき内容が書かれている。なぜなら極めて深刻だからである。若年層が急増し、指導層が大量退職、指導層が不足する。よって適不適にかかわらず管理職になってしまう。また、ブラック風評が受験者減に拍車を掛け、大学では実践指導よりも研究上位の意識が強く、実務教員も論文の本数で任用する。よって学生の時に道徳の授業を見せてもらったという学生は皆無に近い。
 「採用」「学級開き」という出会いに焦点を当て、離職をなくし、不安を取り去り、安心と希望を与える取り組みをしている海外自治体の実情と工夫が紹介されている。日本の教育は海外から高い評価を受けるが、初任から力ある教師に育成するという流れは、かなり形骸化している感がある。個々の研修履歴を蓄積している自治体は数少ない。即急に継続的に力ある教師づくりのできるシステムが必要なのである。
 人材を育てた人が真の人材なればこそ、初任指導教員や行政研修担当が読まねば、今そこにある危機は回避できない。
(2420円 東洋館出版社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

書評

連載