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選挙権が18歳以上に引き下げられるも、若者の政治離れ解消は遠い

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 改正公職選挙法が2018年6月に施行され、それまで20歳以上とされてきた選挙権年齢が18歳以上に引き下げられました。諸外国に歩調を合わせるとともに、若者の政治離れに歯止めをかけるのが狙いです。
 法改正直後の参議院議員選挙では比較的高い投票率を記録しましたが、翌年の衆議院議員選、3年後の参院選では投票率が大きく落ち込みました。若者の政治離れ解消への道はまだ遠いようです。

シルバーデモクラシー脱却へ70年ぶりの引き下げ

 選挙権年齢が引き下げられたのは、25歳以上を20歳以上に改めた1945年以来70年ぶりです。現在の日本社会は少子高齢化が進行し、人口ピラミッドで圧倒的に高齢者が多くなりました。

 選挙の投票率は年齢層が下がるほど低下しています。その結果、高齢者を優遇し、次世代につけを回す政策が繰り返され、「シルバーデモクラシー」と批判する声が上がっていますが、若者の投票率は一向に上がりません。

 その解決を目指したのが選挙権年齢引き下げの理由の1つです。次の時代を担う若者に少しでも早く政治と関わりを持たせようとする思惑も込められています。

海外では選挙権年齢18歳以上が主流

 諸外国の多くが20歳未満に選挙権を与えていることも、引き下げの理由に挙げられています。

 国立国会図書館が2014年に調査したところ、世界191の国と地域のうち、9割近くが日本の衆議院に該当する下院の選挙権年齢を18歳以上としていました。このなかには米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダという先進各国が含まれています。

 18歳以外の国も存在し、韓国は19歳以上、アルゼンチンやオーストリア、ブラジルは16歳以上。カメルーンのような以前の日本と同様の20歳以上としている国もありますが、少数派だったのです。

投票には選挙人名簿への登録が必要

 国政選挙の選挙権が与えられるのは満18歳以上になる日本国民です。満18歳かどうかの算定は投票日を基準に行われます。年齢は誕生日の前日に加算されるので、投票日の翌日に18歳の誕生日を迎える人までが選挙に投票できます。

 ただし、投票するには選挙人名簿に登録されていなければなりません。選挙人名簿に登録されるには、住民票が作成された日または転入届を出した日から3カ月以上、住民基本台帳に記録されている必要があります。地方選挙の場合は年齢のほか、該当区域に3カ月以上継続して居住していることが条件に加わります。

若者の政治参加で民主主義の土台を強化

 法改正当時、新たに選挙権を与えられた18歳、19歳の若者は全国に約240万人いました。その分、有権者が増えて投票総数の増加が見込まれます。若者の政治離れに歯止めがかかり、政治参加が進めば、民主主義の土台が強化され、財政再建など中長期的な課題に若者の声をより反映させることが可能になります。

 これが選挙権年齢引き下げの最大のメリットといえます。国会での法案審議でも「未来の長い有権者が増えると、社会全体で未来に対するさまざまな議論が巻き起こるのではないか」、「今後の日本を担う若者を政治に巻き込むことができる」などの意見が出されました。

改善が求められる日本の若者の政治意識

 しかし、大きな懸念が残っています。有権者が増えたところで投票に行かなければ若者の声を政治に反映できません。

 OECD(経済協力開発機構)の調査では、高齢者ほど投票率が高いのは世界的な傾向ですが、調査対象30カ国のうち4カ国は16~35歳の投票率が55歳以上より高く、日本以外の他国は高齢者と若者の投票率の差が20%以内でした。

 これに対して、日本は25.2%の差がついていたのです。この数字は日本の若者の政治に対する関心が世界でも飛び抜けて低いことを表しています。そこで、若者の意識を変える主権者教育の充実が学校に求められているわけです。

ブーム過ぎ、10代の投票率は低下する一方

 選挙権年齢引き下げ初の国政選挙は2016年の参院選。引き下げの影響に社会やマスコミが注目した結果、18歳51.28%、19歳42.30%という比較的高い投票率を記録しました。

 しかし、2017年の衆院選では18歳47.87%、19歳33.25%、2019年の参院選は18歳34.68%、19歳28.05%と次第に低下しています。2度の参院選を比較すると、3年間で14~16ポイントも急低下しており、選挙権年齢の引き下げが若者の政治離れに歯止めをかけたとはとてもいえないのが現状です。

 ブームで一時的に投票率が上がったものの、政治離れの実態に大きな変化がないというのが一般的な見方です。

総務省と文部科学省が高校生向け副読本を作製

 若者の政治参加を進めるには、学校で主権者教育に力を入れる必要があります。総務省と文部科学省は「私たちが拓く日本の未来」と題した副読本を作製し、高校生に提供しています。選挙や投票の仕組みを分かりやすく解説し、模擬選挙や模擬議会の実施方法などを例示した内容です。ディベートで政策論争し、有権者の1人であることを実感してもらおうとしています。

 しかし、投票率の低下が続いている以上、高校生へ主権者教育を行っても政治に関心を持たせるのは難しいのかもしれません。もっと早い段階から主権者教育を進める必要がありそうです。

若者の政治参加に国を挙げた英知の結集が必要

 若者の政治離れは学生運動が下火となった1970年代からたびたび、叫ばれてきました。しかし、一向に改善しないまま、現在を迎えています。

 主権者教育の充実とともに、若者が投票しやすい選挙制度改革も考えなければならないでしょう。どうやって若者に政治を身近に感じてもらうのか、国を挙げた英知の結集が求められているようです。

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