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大学入試改革でどう変わる?2021年からスタートする大学入学共通テスト

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 ※情報は投稿時点のものです。

 大学入試改革によって2021年から現在の大学入試センター試験が大学入学共通テストへ変わります。従来の知識や技能だけでなく、思考力や判断力、表現力をより一層重視した大学入試に切り替えるもので、急速な技術革新やグローバル化など大きな社会の変化が背景にあります。大学入学共通テストの導入で入試はどう変わるのでしょうか。

知識、技能重視を改め、学力の三要素を評価

 現行の大学入試センター試験が1990年に登場して以来、本格的な入試改革が進むのは30年ぶり。この間、技術革新やグローバル化が急速に進み、社会で求められる能力は大きく変わってきています。

 これまでは学んだ知識や技能を理解する力が大切とされてきましたが、これからは自分で考え、新しい時代を切り開く能力が必要になってきます。

 30年ぶりの大学入試改革はそれを踏まえたもので、学力の三要素を評価できる入試にしようとしているのです。学力の三要素とは「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を指します。

試行調査を終え、2021年1月に本番

 大学入学共通テストの第1回目は2021年1月16・17の両日を予定しています。文部科学省は高大接続システム改革会議の最終報告を受け、2017年に大学入学共通テスト実施方針を策定しました。その後、大学入試センターは試行調査を実施して準備を進めています。

 文部科学省は次期学習指導要領に基づくテストとなる2024年度以降の方針について、2021年度をめどに策定、公表する方針でよりレベルが上がった試験内容になるとみられています。

国語と数学に記述式問題、英語は民間試験を導入

 試験内容に変化があるのは、国語と数学の一部に従来のマークシート式の問題に加える形で記述式問題が出題されます。

 文部科学省は2024年度以降、地理歴史・公民や理科でも記述式問題を導入する方向で検討を進める方針です。さらに、英語では民間資格・検定試験といった英語民間試験が導入されます。

国語の記述式、配点に含めず段階評価

 国語は近代以降の文章について記述式問題が3問程度出題されます。記述する文字量は長くて80~120字程度。根拠に基づいて端的に論述することにより、学力の三要素を評価するのが狙いです。

 試験時間はセンター試験より20分延長され、100分を予定。配点はマークシート式問題に200点、記述式問題はマークシート式問題の配点に含めず、個別の段階評価です。

数学の記述式はマークシートと混在で出題

 数学は「数学Ⅰ」と「数学Ⅰ・数学A」で記述式問題が3問程度出題されます。出題範囲は数学Ⅰの内容で、図表やグラフ、文章などを用いて考えたことを数式で表したり、問題解決の方法を簡略に表現したりする能力を評価します。

 試験時間は10分長くなり、70分になる予定。マークシート式問題と混在した形で出題され、マークシート式問題の配点に含まれます。

英語民間試験は6団体の7試験を予定

 英語はグローバルな人材育成を目指すため、「リスニング」「リーディング」の2技能に、「スピーキング」「ライティング」を追加した4技能のバランス良い習得が求められています。

 配点もこれに伴い、リスニング50点が筆記から名称変更するリーディング100点、リスニング100点へ変更。リーディングはさまざまな文章から内容を把握し、必要な情報を読み取る力を問うこと。発音やアクセント、語句整序を単独で問う出題はなくなります。

 さらに、「読む」「聞く」「話す」「書く」の英語4機能を評価するため、英語民間試験が導入されます。文部科学省が認めた団体の試験を受け、大学入試センターがヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR・セファール)を利用して異なる試験を評価し、各大学へ成績提供します。当面は大学入学共通テストとの併用ですが、2024年度以降は民間試験に完全移行する計画です。

視野を広げ受験対策に工夫が必要

 試験内容の変化に伴い、受験勉強も変わりそうです。記述式問題で大きく評価される学力の三要素。その土台を築くためにより多くの文章に触れ、視野を広げておく必要が出てきます。

 さらに、記述式問題は教科書の内容を本質的に理解していなければ回答が困難です。扱われている題材について何が説明されているのかをしっかりと考え、自分の意見をまとめる練習をすることも心がけておくべきでしょう。

記述式採点と英語民間試験で問題が表面化

 大学入学共通テストへの移行には大きな課題が残されています。記述式の問題採点は受託する民間業者が決まりましたが、50万人の受験生の解答を短期間で採点しなければなりません。試行調査では採点結果と自己採点の不一致率が30%もあり、この解消に取り組む必要もあります。

 英語民間試験においては地方在住や低所得世帯の受験生が不利になることの解消策が不十分だと指摘されているうえ、試験を受ける場所や日時が明らかでないという理由から、導入延期を求める声も出ています。

見切り発車とならない体制構築を

 30年ぶりの大きな大学入試改革ですが、直前になって次々に問題が発覚し、見切り発車の側面に批判が集まるようになってきました。

 文部科学省や大学入試センターはあらゆるトラブルを想定し、体制づくりを進めなければなりません。その一方で受験生や保護者は何がどう変わるのか、しっかりと理解しておく必要があるでしょう。

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