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ほんとうの道徳

22面記事

書評

苫野 一徳 著
「市民教育」への発展的解消を主張

 学校教育で道徳教育はすべきではない、今後は「市民教育」へと発展的解消すべきというのが著者の主張。その過渡期に、哲学的対話、学校・ルールをつくり合う道徳教育、プロジェクトとしての道徳教育を提案する。
 著者の言う「市民教育」と、書評子の考えとはどう違いがあり、重なる点はあるのか、本書を読みながら、そんなことを考えていた。
 ちなみに書評子が、現時点で考える「教育の方向」とは「自己教育」―老若男女を問わず、人間が生きていく限り、常に、現実・事実を見詰め、自分で考え、自分の行為・行動を自分で決め、その方向に自分のペースで歩み続けていくこと、自分を自分が教育し続けること―である。教育の目指すものに「自己教育」を据え、どの人も、その実践の徒であってほしいという願いがある。
 著者は市民社会の原理を「自由の相互承認」の原理と捉え、市民教育の土台となる学校では子どもたちの「自由の相互承認」の感度を育む場と位置付ける。さらに、多様性が入り交じった学校とし、「相互承認」する機会をもっと豊かに整えるべきと考えている。
 著者の言う「ほんとうの道徳」、「教科」や「評価」「徳目」などの“考え方”などについても、あらためて、己の視点・観点から「自分自身を見詰め」「確認して」いったつもりである。そのきっかけをつくってくれた著者に感謝したい。
(1760円 トランスビュー)
(関根 正明・元山形大学講師)

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