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小・中・高の系統性ある英語教育を目指して

8面記事

企画特集

服部 守賀 全英連三重大会実行委員長

~全英連三重大会の見どころ~

 全国英語教育研究団体連合会は11月8・9の両日、三重県津市で「第69回全国英語教育研究大会(全英連三重大会)」を開催する。「サミット開催の地三重から発信! ~校種間の学びの系統性を意識した英語教育~」を大会コンセプトに掲げ、記念講演や授業実演、分科会が行われる。実行委員長の服部守賀・県立津東高等学校長に2日間の見どころを聞いた。

 情報化・グローバル化がさらに進む激変の時代に英語教育は校種間の一貫した実践が求められている。今大会では小学校からの学習指導要領の全面実施を前に、学びの系統性を意識した英語学習の重要性を喚起したいとの狙いがある。「小学校から高校、大学そして生涯にわたって英語を学び続ける学習者像を前提としたうえで、学校教育における英語教育のあり方について研究協議を行い、意見交換をしたい」と服部委員長は意気込む。
 三重県は県教育ビジョンの中でグローカル人材の育成を掲げ「地球的な視野で考えながら自分の地域で活動できる人材」「地域や異文化に対する深い理解を持ちながら地球的な規模で活動できる人材」の育成を目指す。
 特色ある取り組みとしては表現や創作を大切にした生徒主体の活動がある。毎年10月に開かれる英語コンテストでは物語を創作する英作文、生徒のオリジナル台本によるスキットやスピーチが披露される。生徒がコンテストに向けてストーリーや演技を練る過程は探究的な活動にも通じるという。
 授業改善に向けては、授業公開を積極的に行う仕組みが特徴だ。県高等学校英語教育研究会(高英研)と県教委が連携して授業公開を教員研究の一部として位置づけているため、他校の授業を参観して研究を深める風土が根付いているという。
 実行委員会は県内英語科の管理職を中心に、3年前から発足。現在80名の教員が大会運営の準備にあたっている。小学校は管理職のほか外国語活動に熱心に取り組んできた教員も加わり、運営会議は12回を重ねた。
 内容面では昨年末から有識者を招いてのスタートアップ研修を開始、授業実演や分科会で発表する県内の教員らへの研修会等も行い、県内で一丸となって準備を進めてきた。2月に県内で開催された全国小学校英語教育実践研究会(全小英研)には中学・高校の教員も多数参加した。「研修会を通して授業を進める中で、担当者だけでなく悩みを共有し校種を越えた情報交換ができている。特に小学校の英語教育の盛り上がりを肌で感じ、中高も大きく変わらねばという機運が生まれた」(服部委員長)という。

助言者には英語教育の第一人者がそろい踏み

 1日目は記念講演と授業実演、懇親会が予定されている。午前は元文部科学省教科調査官の向後秀明・敬愛大学教授が講演する。
 午後は授業実演が3校ある。小学校は三重大学教育学部附属小学校の岡井崇教諭が東京オリンピック・パラリンピックを題材に6年生を教える。児童が自分の言葉で表現しコミュニケーションを楽しむ授業を目指すという。指導助言者には直山木綿子・文科省視学官。
 中学校は津市立芸濃中学校の庄山大樹教諭による2年生の授業だ。生徒が持つ情報や考え、気持ちを、間違いを恐れずに伝えあうことを大切にする授業、活動や練習のバランスがよい授業展開を意識しているという。指導助言者は、元文部科学省視学官の太田光春・名古屋外国語大学教授。
 高校は県立津高校の伊藤毅教諭が担当する。「地域の未来を考える」をテーマに生徒が議論する予定だ。この時期の3年生による発表は珍しいが、3年間の学習の積み重ねで身に付けた力を、ディスカッション活動を通して示したいという。指導助言者は向後教授。
 新学習指導要領に深くかかわる英語教育の第一人者を指導助言者に迎えることで「児童生徒や授業者だけでなく、参加した全国の先生に授業改善へのよりよい一歩を踏み出してほしい」と服部委員長は期待をかける。
 2日目の分科会では30の分科会が開かれる。中高連携の分科会では外国人教員による発表も注目される。

サミットのレガシーを三重から全国へ

 三重県は2016年にG7伊勢志摩サミットが開催された。服部委員長はサミットの経験を教育にも生かしたい考えだ。「世界から大勢の人が集まりG7での議論や三重県の魅力が発信されていった。本大会も同じように英語教育に関する議論や研究成果を発信し、改善につながる機会としてほしい」。
 サミット開催当時、G7各国から28名の青少年が集い、環境や経済、人材育成について議論する「ジュニアサミット」も開かれた。県内からも高校生が参加し「その姿は児童
生徒にとって英語のみならず世界の社会的課題に目を向けるよい刺激になった」(服部委員長)。
 今大会1日目には、そのジュニアサミットに参加した学生によるスピーチを予定している。
 さらに懇親会ではサミットで乾杯酒として用いられた地酒や松阪牛を提供し同県の豊かな味わいも伝えていくという。
 「令和最初の全英連大会を英語教育の新たな時代の幕開けにふさわしいものにしたい」と服部委員長。これからの英語教育の未来を議論し発信する2日間となりそうだ。

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