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予算増加で学校施設の老朽化対策を推進 令和2年度の概算要求から

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施設特集

文部科学省

学校施設を改善する予算を大幅増
 文部科学省は8月29日、令和2年度(2020年度)の概算要求を発表した。総額は今年度の12%増となる約6兆円で、小中学校の全教室に高速で大容量の「GIGAスクールネットワーク」を3年計画で整備する新事業に375億円を計上したほか、教員の働き方改革や国立大学改革の推進などの文教関係予算に約4兆5千億円(4千億円増)を要求しているのが特徴だ。
 なかでも、もっとも要求額が増加しているのが「教育研究環境の改善」(約2千7百億円増)で、その内訳は、公立学校施設整備(千6百億円増)、国立大学等施設整備(566億円増)、私立学校施設整備(397億円増)、認定こども園施設整備(152億円増)となっている。

建て替えせずにライフサイクルを伸ばす
 こうした背景には、高度成長期に建てられた校舎が老朽化を迎え、一般的に改修が必要となる経年25年以上の建物が全体の7割を占めるなど深刻な状態になっていることがある。したがって、これまでのように校舎自体が古くなったら新しく造り変えるといったことは、財政的な面から無理に等しいといえる。
 そのため、子どもたちの安全と健康を守っていくためには、古くなった建物を計画的・効率的に修繕することでライフサイクルを伸ばしていく、建物の「長寿命化」を図ることが求められている。
しかも、近年多くの大規模災害が起きている中で、防災の観点から見ても安全性に課題がある学校施設が全国の半数近くを占めているといった現状がある。こうした防災・減災に向けて万全を期すために、耐震化や非構造部材の耐震対策などを推進し、学校施設の強靱化を図ることも必要になっている。
 すなわち、このような対策や老朽化による事故等の危険リスクを低減するため、来年度の概算要求では、公立学校施設の整備に約2千3百億円、国立大学等施設の整備に約9百億円を計上しているのだ。

「事後的修繕」から「予防的修繕」への意識改革を
 従来40年だった学校施設の建て替えサイクルを、今後100年持つように長寿命化させていくためには、PDCAサイクルに基づき、保全・再編を実施していくことが重要になる。したがって、文部科学省は2020年度までに管轄する各自治体に、個別施設ごとの長寿命化のための計画を策定するよう求めているところだ。
 だが、財務省が小中学校約3千校に調査したところ、今年4月時点で8割が未策定と長寿命化への意識が低いことが明らかになっている。そこには、自治体の「事後的修繕」体質が根強く残っていることが推測できることから、これを「予防的修繕」に変えていくために、長寿命化対策に取り組む自治体に国の補助金を優先的に配分したり、補助率を上げたりする改革を行うことを示唆している。
 なお、長寿命化改修にあたっては、よりよい教育環境の確保やトータルコストの縮減・予算の平準化、今後の方針の共有による学校関係者・地域住民の理解の促進といったことを踏まえつつ、時代にふさわしい教育の場としての高機能化や快適性を高めることにも留意する必要がある。
 このため、文部科学省では「学校施設の長寿命化計画策定に係る手引」を公表。各自治体がこの手引きを参考にして、それぞれのインフラの長寿命化を図れるよう対応している。

ている。

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