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公立小中学校・普通教室の冷房設置率約8割に

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施設特集

今後の課題は、避難所も兼ねる体育館への設置

 文部科学省は、熱中症対策として急ピッチで進めている「公立学校施設における冷房設備」の設置状況について、最新の調査結果を公表した。その内容を紹介する。

昨年度より18・2ポイント増加
 夏季の気温上昇が年々厳しくなる中、小中学校における普通教室の冷房設置率は約半数にとどまっていたことから、文部科学省では緊急対策として昨年度の補正予算で800億円を投じ、2019年度中に未設置の学校に整備する計画を進めている。その進捗状況となる「公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況について(2019年9月1日現在)」の調査結果が発表された。
 それによれば、公立小中学校のうち、空調(冷房)設備を設置している普通教室の設置率は78・4%(前年60・2%)と18・2ポイント増加した。ちなみに、文部科学省ではおおむね3年に1度調査を実施しているが、10年前の設置率は2割にも満たず、初めて50%を超えたのは2017年になってからだ。

普通教室は、今年度中に9割設置を見込み
 今回の調査で、小中学校の普通教室における設置率が100%に達したのは、東京都、滋賀県、香川県で、福井県や群馬県、神奈川県などがそれに迫っている。また、もっとも低いのは北海道の0・8%で、青森県5・6%、秋田県18・7%と続いているほか、意外と低いままなのが静岡県46・5%、長野県48・7%だった。
 暑さ対策として考えると東北地方の設置率が低いのは理解できるが、近年では夏場の猛暑時は全国的に気温の差がなくなっている。その意味でも、今後の設置率の進捗に期待したい。
 さらに、高等学校における普通教室の設置率は83・5%(前年77・2%)だった。この中では、宮城県が3・6%(小中学校34・5%)と極めて低いのは気になるところ。
 ただし、すべての普通教室に冷房を設置するとなれば、一校あたりの台数は数十台規模に上り、高圧受電設備や換気設備等も設置する必要がある。そのため需要が一気に増加した今年の夏に限れば、人手が追いつかないという声があったことも事実だ。
 とりわけ、平日は授業がある学校は、工事日が限られるといった問題がある。こうした事情も踏まえ、文部科学省では今年度末には普通教室で9割の設置率に達する見込みを示している。

体育館の設置率はわずか3%
 一方、体育館等は全保有数3万4429室のうち、冷房設備を設置している室数は1095室であり、設置率は3・2%(前年2%)と今回の調査でも微増にとどまった。小中学校の体育館等でもっとも高い設置率は東京都の24・3%で、他都道府県はすべて5%未満となっている。
 学校の体育館は災害時には地域の避難所も兼ねることから、これまでの震災等の教訓からも空調設備の必要性が指摘されている。だが、子どもたちが学習する場となる教室への導入が優先されていることや、体育館のような広いスペースに設置するとなると初期費用も増えるほか、ランニングコストも高額になることから一歩も二歩も遅れているのが現状だ。したがって、現状では大型の扇風機やスポットクーラー、冷水機などを導入し、子どもたちの熱中症対策や防災対策に充てている学校が多くなっている。
 なお、文部科学省では、市町村別の設置状況についてもWebサイトで公表している。

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