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学力・人格と教育実践 変革的な主体性をはぐくむ

16面記事

書評

佐貫 浩 著
新自由主義下の教育への対抗軸

 1872(明治5)年、学制発布によってわが国における近代的学校制度が始まってから一世紀半近く。その時々の政治・経済の状況の影響を受けながら、学校教育制度は歴史的に変化してきた。
 今日の学校教育のありようを根本から規定している最も大きな要因は新自由主義である。新自由主義の下で、グローバル資本は利潤獲得と経済競争戦略を徹底的に追い求める。学校教育には、そうしたグローバル資本の国家戦略の達成に資する人材養成が求められることになる。本書が指摘するように、新指導要領の「資質・能力」規定や「関心・意欲・態度」評価は、肥大化された評価を志向するものであり、人間の人格までもが評価の対象となっていく。その結果、学校教育現場では、自己責任や競争の論理が蔓延していくことになる。その中で、子どもたちも教師たちも疲弊し、自分たちの将来に不安を感じつつ、日々の生活を過ごしている。
 本書は、こうした厳しい現実に対して、学力と人格の関係性を改めて問い直すという視点に立って、理論的な研究成果や学校教育の中で蓄積されてきた教育実践の成果に基づいて、変革的な主体性を育むという対抗軸を提起したものである。自らを自由で主体的な存在として成長させていく学びを保障する教育実践の創造が、切実に求められている。
(3080円 大月書店)
(都筑 学・中央大学教授)

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