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学校トイレの問題点 家庭とのギャップがストレスに

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 「臭い、汚い、暗い」学校のトイレを何とかしたいという声が多い。そこで、「トイレ」を通して社会をより良い方向へ変えていく活動に取り組んでいるNPO法人日本トイレ研究所の加藤篤代表理事に、学校トイレの問題点について聞いた。

加藤 篤 NPO法人日本トイレ研究所代表理事
 災害や育児、健康にまつわるトピックスを満載した「うんちはすごい」(発行 イースト・プレス、定価 840円+税)が全国書店にて発売中。

ハードだけでなく排泄教育も重要
 「子どもたちにとって一番のストレスになるのは、家庭とのギャップだと思います」と加藤氏。文部科学省が2016年に行った調査によれば、公立小中学校施設における和式トイレの割合は56・7%だが、地域によっては大半を占めるところも多い。家庭のトイレが洋式化した中で、いざ学校に入って和便器を使うとなったら、子どもたちが戸惑うのは当然。しかも、新しく清潔なトイレであれば抵抗感も薄れるかもしれないが、老朽化も進んでいる。
 そうなると、トイレを暗黙的に“嫌なもの”と認識することになって、使用するのを我慢したり、ひやかしの対象になったりする。すなわち、日常とギャップのある空間を使わざるをえない状況になっていることが、学校トイレの問題点と口にする。
 「安心して排泄できない状態を強いているのは、のどが乾いたのに水を飲ませないようなもの。排泄を我慢した状態では、美味しく給食を食べられない、落ち着いて授業に集中できないといった、負のスパイラルのスイッチをトイレが生むことになります」
 トイレ改修については、現在の生活スタイルを考えれば洋式化するのが望ましいが、豊かさという点では選択できる環境を整えることだという。「洋式、和式のバランスは考える必要はありますが、たとえばLGBTへの対応としては男女共用があってもいいわけです」
 さらに、もう1つの問題は、身体の仕組みとして大切な排泄についての教育が抜け落ちていることにあるという。「食べることは食育、運動することは体育とある中で、排泄については何もない」と軽視されていることを指摘する。

災害発生後、真っ先に必要なのはトイレの確保
 一方、地域の避難場所となる体育館のトイレ改修では、お年寄りや障がい者などに配慮したトイレを整備するとともに、応急的な対応としてマンホールトイレや携帯トイレ、簡易トイレ、仮設トイレなどを組み合わせて準備しておくことが大切と強調する。「その際、忘れないで欲しいのは屋内と屋外の両方を考えること。なぜなら、建物内のトイレにしか備えがなかったとすると、そこに外部支援者も含め利用者が集中してしまい混乱が生じるからです。どこにどんなトイレを設置するかを含めて事前に決めておくことが重要になります」
 また、意外と見落としがちな点として挙げたのが、災害発生後、最初に必要になるのはトイレであること。「過去の震災の調査でも、6時間以内にトイレに行きたくなった人が7割以上を占めているからで、スピードでいえば水や食料よりも優先する必要があります」と指摘。順番を間違えるとトイレが汚物まみれになり、健康状態の悪化や集団感染のリスクも高まることになる。
 その意味でも、平時も災害時にもトイレを上手く運用するためには、空間設備的な改善に加えて、日頃からトイレがいかに重要であるかを関係者全員が共有することだという。「たとえば、被災した熊本市と東松島市では運動会のときにマンホールトイレを使っています。これは子どもたちや保護者、地域の人などが一緒に体験できるよい機会になります。こうした機会だけでなく、日頃から教育の場でもトイレをもっと活用してほしいですね」

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