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特別の教科となった道徳、以前とどこが変わったのか

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特集 教員の知恵袋

 長く教科外活動として行われてきた道徳の授業が小学校で2018年度、中学校で2019年度から「特別の教科」として再スタートしました。国の教育再生実行会議の提言を受け、教科化されたもので、各地で相次ぐいじめ問題が背景にあります。教科となった道徳の授業はこれまでとどう変わったのでしょうか。

小学校が2018年度、中学校が2019年度から全面実施

 道徳は週1回の授業で実施されてきましたが、2015年に学習指導要領が一部改訂され、特別の教科として位置づけられました。

 全面実施は小学校が2018年度、中学校が2019年度からで、他の教科のように数値で評価するのになじまないとして、新たな枠組みである特別の教科という形を取っています。

 文部科学省は学習指導要領改訂の際、多様で効果的な道徳教育の指導方法に改善し、子どもたち1人ひとりの良さを伸ばして成長を促す授業にする方針を示しました。

後を絶たないいじめが教科化のきっかけに

 小中学校の道徳の時間は1958年にスタートしました。教材は検定を受けない副読本や教員が独自に作製した資料などです。

 道徳教育の位置づけに何度も論争が起きましたが、教科外活動で実施する方針を長く変えませんでした。戦前の教育勅語に基づく国主導の道徳教育が戦争への道をひた走る一因となったことを反省したからです。しかし、それをあえて教科化した背景には、後を絶たないいじめの問題が潜んでいます。

・教育再生実行会議が道徳教育充実を提言
 文部科学省によると、2018年度に全国の小中高校と特別支援学校で認知されたいじめの件数は54万件以上に上りました。

 前年度に比べ、31・2%も増え、いじめ撲滅が叫ばれながら根絶できない厳しい実態が浮かび上がっています。統計上の認知件数は2012年度から増加に転じ、中には自殺など痛ましい出来事も起きました。

 国の教育再生実行会議が2013年度、いじめ問題に対する提言をまとめ、道徳教育の充実を求めたのを受け、文部科学省の有識者会議は改善の方向を打ち出したのです。

・文部科学省有識者会議は学校現場の道徳軽視を問題に
 文科省の有識者会議は道徳教育の現状について、多くの問題点を指摘しています。歴史的な経緯に影響され、道徳教育自体を忌避する風潮が残っているうえ、通知表への記載が必要ないこともあって、軽視されやすく、他の教科に振り替えられることがしばしばあったことです。

 さらに、教員に道徳教育の理念が十分に理解されず、効果的な指導方法が確立されていないことも課題として挙げられています。

 文部科学省は道徳の教科化前に副読本の「心のノート」を全国の小中学校に配布するとともに、道徳教育推進教員を中心とした指導体制を推し進めましたが、改善が見られませんでした。これも抜本的な制度の手直しに踏み切る一因となりました。

いじめ問題に対応できる能力を授業で育成

 教育基本法では、道徳教育の目的を「人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成」と規定しています。中学校学習指導要領は「主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者とともによりよく生きるための道徳性を養う」としています。

 子どもたちの道徳心を養うことで健全な成長を促し、いじめなどの問題を根本から解決しようとしているわけです。文部科学省はいじめ問題に対応できる能力や資質を養うには、「自分ならどうするか」を正面から問い、多面的に物事を考えて議論する道徳の授業が必要だと考えています。

・主たる教材として検定教科書が登場
 特別の教科となったことで授業はどう変わったのでしょうか。

 小学1年生は年間34時間、それ以外は年間35時間の履修が義務づけられました。教科書以外を教材に活用できますが、主たる教材として検定教科書が使用されることになりました。

 しかし、文部科学省によると米国や英国は検定教科書がなく、ドイツは州で検定をしているものの、使用義務を学校に課していません。話し合いや自分の考えを書くことを中心に据え、人間としてしてはならないことを正しく区別できる能力を育てています。

・子どもの成長を促す評価制度も導入
 道徳の授業には新たに評価制度が導入されました。

 ただ、他の教科と違って数値で評価を示すのになじまないという理由から、教員が子どもたちの成長ぶりをじっくりと見定め、励ます言葉を文章に書いて評価しています。

 他の子どもたちと比較することはありません。目標に達したかどうかを見る授業ではないからです。入学試験の教科となることもなく、通知表への記載内容などは学校の判断に委ねられています。

不寛容の時代を克服する鍵も道徳教育に

 道徳の授業はいじめ問題の対策ばかりに目が行きがちでしたが、子どもたちが激動の時代を生きていくうえでの基盤となる道徳心を養うことも重要です。

 日本は格差社会の歪みが深刻さを増し、不寛容の時代に突入したといわれています。これを解決する鍵が道徳教育の中にありそうです。

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