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主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック

12面記事

書評

大島 純・千代西尾 祐司 編
科学的知見踏まえた授業改善を訴え

 難しい。現場を離れて十余年が経過した評者には手ごわい本だ。しかし、今の人たちには必要不可欠な本になろう、これが読み終えての率直な感想である。
 なぜなのか。本書は、授業実践や教育改革に科学的知見を持って臨むことの大切さを訴えているからである。とかくすると経験や憶測でざっくりと処理しがちな教育現場には警鐘を鳴らすものだ。
 本書は、新しい学びの考え方、授業設計、継続的な授業改善―を柱とする3部、9章となっているが、何といっても各章を構成する節の内容が特徴的だ。評者にとってはなじみの薄いキーワード(例えば、誤概念と概念変化、外化、自己調整学習、生産的失敗、分散認知、足場かけ等々)が多いのだが、具体例を基にきちんと定義付けされるので安心して読み進められる。加えて、重要箇所はゴシック体、傍点、関連節の提示など、親切な記述が続く。学説の紹介も随所に示され、いつの間にか自分が科学的に分析する必要性に気付いてくる。編者が、「指導主事におすすめしたい本」と自薦している気持ちがよく分かる。
 本書は、ガイドブックだ。これから教職を目指す学生、授業研究で悩みを抱えている先生方、学校現場の教科指導に一石を投じたい指導主事の方々には、ぜひ手に取ってもらいたい。良きガイドになるはずだ。
(2420円 北大路書房)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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