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専門職の質保証 初期研修をめぐるポリティクス

16面記事

書評

橋本 鉱市 編著
教員・保育士・医師など職種横断的に論ず

 条件付き採用期間の6カ月間が、初任者研修制度となり指導担当教諭を配置し1年間に延ばされた。そのスタートと同時に私は担当として2人の新採を受け持った。新鮮ではあったが、道なき道であったことを思い出す。その後、多くの反省から改善が試みられた結果、現状はある程度の域には来ていると思える。しかし、求められるニーズと資質力量のギャップはますます開いているように思えてならない。
 「数によって質を保つ時代」は過ぎ、質がなくとも埋めねばならない危機的状況に来ている。それは予想できたことでもある。高等教育から現場における専門業務への移行期間に、一定の初期研修を課しつつ、いかに実践的な能力を養成すればよいのかという動きが加速している。しかし、その足をすくうように、意図的とも思えるようなブラックニュースが報道されている。頑張っている報道は皆無に近い。その所業が日本の教育を衰退させる。
 熱心で実力のある教員が本音を漏らした。「肩書だけの元校長はいらない」と。教員の質を保証し、教職の専門職化を促すものにするためには、本書に記された視点が極めて重要である。構成は、多岐にわたり医師、法曹、教員、看護師、管理栄養士、社会福祉士、保育士、心理職と項目に分かれ、どの項から読んでもその本質が整理され理解できる。全てわが事として読まねば実にもったいない。
(6050円 玉川大学出版部)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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