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主権者教育論 学校カリキュラム・学力・教師

17面記事

書評

渡部 竜也 著
批判的かつ建設的対話を目指す

 「模擬選挙を取り入れた授業のコツを教えてほしい」という読者を対象にはしていない。曖昧にされてきた「学校カリキュラム・学力・研究・教師」の視点に真正面から取り組んだ内容であるため、類書が見当たらない。
 著者は指摘する。「行き過ぎた自由は多くの人々を幸福にしないし、幸福になるための術まで奪ってしまう。行き過ぎた平等は自由を奪い、人々を怠惰にする。バランスを求めて人々は努力するべきだし、少なくとも公権力がその努力について教育を通して若き市民に呼びかけることは、『自由』と『正義』を社会で維持していくための必要条件」と。読み切り論文で構成している。もちろん、相反する意見や指摘も忌憚なく求めている。書き出しは、「アメリカの社会科の歩みが教えてくれる学校教育での主権者育成の条件」から始まる。特に第4部「主権者に必要とされる学力とは」、第6部「主権者を育成できる教師の教育」は実に読み応えがある。先生方が伸び伸びと自由闊達に、そして創造的な主権者教育カリキュラムを設計するには「どうしたらよいのか」、「どのようなことを学ばなければいけないのか」、そして「どのようなことを考えねばならないのか」を、この一冊に集約しまとめてある。
 今育てなければならない力は「公的な問題についての批判的かつ建設的な対話」と喝破している。座右の書として推挙したい。
(4950円 春風社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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