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現職教員の新たな免許状取得を促進 文科省も積極的に受講環境の充実を図る

15面記事

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 近年の教育内容の量的・質的充実への対応や、少子化に伴う学校の社会性育成機能の強化を背景に「小中一貫教育」の導入が進む中で、教員が従来よりも容易に他の学校種の免許状を取得できる措置が図られるようになっている。そうした現職教員の受け皿となるよう、さらなる免許状取得のための講習の開発・実施が求められているのが、大学通信教育だ。

現職教員の資質向上や幅広い活躍の場を提供するために

 2015年6月の学校教育法の改正により制度化された義務教育学校においては、小中一貫教育を実施することを目的として、教員は、小学校教諭及び中学校教諭の教員免許状を併有することが原則(当分の間は例外あり)とされている。なお、今のところ小学校教諭の中学校免許状の所有状況は59・9%(17万3427人)。中学校教諭の小学校免許状の所有状況は30・4%(5万1878人)である。
 また、「教員免許更新制度の改善について」(2014年3月・教員免許更新制度の改善に係る検討会議)においては、現職教員が免許状を新たに取得することができる免許法認定講習等の制度について、免許状更新講習との相互認定を活用することにより、「教員の新たな教員免許状取得に向けた学びを促進すべきである」との提言もなされている。
 これらを踏まえ、現職教員の新たな免許状取得の促進に資する、免許法認定講習・免許法認定公開講座・免許法認定通信教育を開発・実施することが求められている。
 そこで文部科学省は、たとえば小学校教員が中学校免許状を取得するためには通常は22単位程度が必要なものを、小学校で3年の勤務経験があれば14単位で取得が可能になるなど、受講者の負担軽減にも考慮しつつ、積極的に新たな免許状取得のための受講環境の充実を図る「現職教員の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業」を2017年度から打ち出している。

希少免許教科や、通信・放送・インターネット等の活用も

 こうした中、事業委託先となる大学や教育委員会などに求めたのは、

 (1) 免許外教科担任の縮小に必要な教科等に関する講習の開発・実施
 (2) 小中学校免許状併有のための講習の開発・実施
 (3) 更新講習等にも活用可能な講習の開発・実施

 ―のいずれかを行うこと。これまで委託された事業では、これらの開発・実施に加え、「高等学校看護科普通免許」や「特別支援学校教諭免許」などの希少免許教科や、通信・放送・インターネット等の活用などの開発・実施への取り組みも行われている。
 文部科学省としては、この取り組みにより、教員の資質向上はもちろん、現職教員が幅広い学校種や複数の教科について広く指導することが可能となり、さらには教員配置上の効率化にもつながることを期待している。

現職教員が大学通信教育を利用し、取得できる免許の種類

 こうした背景もあり、大学通信教育を通じて、現職の教員が他教科や隣接校種免許を取得するニーズが高まっている。大学通信教育を利用した免許取得の種類は、「上位免許状」、「他教科免許状」、「隣接校種免許状」の3つがある。
 「上位免許状」は、すでに持っている二種免許状を一種免許状に上進するもの。教員が必要な経験年数を満たしていれば、通信制大学に入学し、足りない単位を取得することで上進できる。
 「他教科免許状」は、たとえば中学校の社会科の免許状を持っていて、これに加えて国語などの他の教科の免許状を取得すること。この場合は、必要な科目・単位の取れる大学・短期大学で、「正科生」または「科目等履修生」として単位修得をし、免許に必要な条件を満たせば、他の教科の免許状が取得できる。
 「隣接校種免許状」は、小学校と中学校など各学校間の連携を強化するために設けられた制度で、普通免許状を有し、実務証明責任者の証明を有する方(3年の教職経験により教員として良好な勤務成績で勤務したもの)が必要な単位を修得し、隣接校種の教員免許状を取得する方法だ。これは各都道府県教育委員会の指導のもと、所定の単位を取得することが必要になる。

「春期合同入学説明会」を開催
私立大学通信教育協会

 公益財団法人私立大学通信教育協会では、大学通信教育を実施している大学・大学院・短期大学による「2020年・春期合同入学説明会」を、札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・大阪・岡山・福岡の全国8都市で1月25日~2月23日にかけて開催する。
 参加申込・費用はいずれも不要。大学・大学院・短期大学別のコーナーで具体的な講義内容や学習方法などについて直接相談できるため、興味のある人や詳しい内容について知りたい人は、ぜひ、この機会を活用することをお薦めする。
 詳細=電話03・3818・3870 http://www.uce.or.jp/

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