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移民から教育を考える 子どもたちをとりまくグローバル時代の課題

13面記事

書評

額賀 美紗子・芝野 淳一・三浦 綾希子 編
特別扱いしない学校文化への異議も

 書名を見て、諸外国の教育事情の研究書か、と誤解してしまった。本書を読む前には「移民」とわが国の教育との接点に全く気付かなかったのである。不明を恥じるしかない。
 前書きと序章を読んだ時点で衝撃だった。日本で生まれてくる子どもの28人に1人は親が外国籍だというのだ。地方であっても、学校に外国籍の児童・生徒が在籍するのは珍しくない。日本は国際移民の時代の中で教育を考えていく必要があるのだ。
 その一例が、第六節の「学校」だ。誰でも平等に接し、特別扱いはしないのが学校としての基本姿勢であり、当たり前だった。ところが、その方針は移民の子どもたちにとって、「奪文化化」の装置にもなっていたというのだ。いわば、学校の独り善がりであり、理解不足でもあったといってよい。
 このような事情を考慮してのことだろう。本書の編集には理解を助ける工夫がある。まず、各節の冒頭に、「キーワード」が幾つか提示され、本文の中で分かりやすく解説される。敬体で語り掛ける文体は優しい。次いで、「考えてみよう」「読書案内」「コラム」と続く構成は読者に発展的な思考を促す。
 もはや猶予の置けない課題に本書の投げ掛けは貴重だ。グローバル化は学校にも押し寄せている。評者の受けた衝撃は現場の先生方にこそ必要なものであってほしい。
(2530円 ナカニシヤ出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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