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定期試験でデジタル採点 公立校の導入広がる

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企業が開発

 多岐にわたる教員の業務の中でも、特に長時間の作業が必要となる定期テストの採点。成績処理に関わる教員の負担を軽減しようと、各地の公立学校で、民間企業が開発したデジタル採点システムを導入する事例が広がっている。教材販売を手掛ける企業では、小学校の新学習指導要領の全面実施に合わせて、新年度から新たにサービスを提供する動きも出ている。

小学校向け新サービスも

 ワードやエクセルなどのソフトを使って解答欄を作成し、専用のマークシートに答案用紙を印刷する。テスト終了後、回収した答案をスキャナーやコピー機で読み取ると、事前に設定した模範解答に応じて採点が始まる。
 スキャナーで読み取り可能なマークシートを販売するスキャネット(東京・千代田区)の「デジらく採点2」。
 片仮名などの1文字で選択肢を記入する設問では、手書き文字を自動で正誤判定する。語句や文章で解答する設問は、クラス全員分の解答をパソコンの画面上に並べて簡単に採点を行える。
 用紙は1箱千枚入り1万5千円から、採点ソフトは無料で提供している。採点済みの答案用紙や一人一人の得点などを記録したデータも無料で出力できる。
 同社のマークシートを導入している小・中学校や高校は、2018(平成30)年12月時点で3340校に上り、そのうち公立校が2218校を占める。デジらく採点2は中学校や高校での利用が多いという。全国の教委からも導入を検討したいとの声が寄せられている。
 同社の担当者によると公費での購入が圧倒的に多いが、学校側の許可が下りないなどの理由で、興味を持った教員が私費で使用している場合もある。
 東京都町田市立忠生中学校の粂井顕教諭は、同社のウェブサイトを偶然見つけ、担当する社会科のテストに活用してきた。
 1学年6クラス分の採点に5~6時間かかっていたが、約2時間に短縮。「できるだけ早く生徒に返却したいため、以前は平日の夜中や許可を取った上で持ち帰って土日に採点していた。業務の効率化に役立っている」と粂井教諭は話す。
 生徒にとっても入試対策になるという。都立高校の入試はマークシート方式で実施されていることを踏まえ、マークの濃さに注意するよう指導している。
 英語科でも同社の無料システムを活用する。粂井教諭から紹介を受けた薄井亮主任教諭は、「採点よりも問題の作成に時間をかけるべき。採点が好きな教員はいないと思う」と言う。

勤務時間の差大きく
 小学校を対象にテスト教材を販売する各社も、2020(令和2)年度から新たな採点サービスの開始を発表している。
 光文書院(東京・千代田区)は同年春から、テスト用紙をスキャンし、パソコンの画面で問題ごとに全児童分の解答を採点できる「ひまわりエディション」を提供する。
 教育同人社(東京・豊島区)では、採点済みのテストから教員が付けた○や×、△といったマークをAI(人工知能)が識別する「はなまるAI(アイ)」の提供を予定する。
 小・中学校の教員にとって、成績処理は勤務時間の個人差が大きい業務の一つに指摘されている現状がある。
 文科省が2016(平成28)年度に実施した教員勤務実態調査では、1週間当たりの勤務時間が60時間以上と60時間未満の2グループに分けて業務内容別の時間を比較した。約30種類の業務のうち「授業準備」や「学校行事」「部活動」「学年・学級経営」に並び、「成績処理」でも差が大きいことが分かった。
 また、2006(同18)年度調査と比べると、中学校教諭では平日、休日ともに「成績処理」にかかる時間が10分以上増加したとの結果が出ている。

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