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怠けてなんかない!サードシーズン 読む・書く・記憶するのが苦手な子どもたちが英語を学ぶとき

16面記事

書評

品川 裕香 著
つまずく原因と対策を解説

 冒頭、14歳の帰国子女のエピソードが紹介される。4年余りのアメリカ生活を経て帰国。英語は流ちょうに話すが、読み書きが苦手。単語のつづりもよく間違える。「日本の英語をバカにして怠けている」と教師に叱責され、ついにはリストカットをするまで追い詰められる。
 彼女は先天的に読み書きが苦手な「発達性ディスレクシア」だった。アメリカでは既にディスレクシアの診断を受けていた。
 ジャーナリストの著者がこの少女と出会ったのは23年も前のこと。以来、この問題に真摯に向き合い、取材を重ねてきた。ディスレクシアに関する本邦の啓蒙書と言える『怠けてなんかない!』シリーズは、本書で4冊目。就学前をゼロシーズンとし、今回のサードシーズンは「英語を学ぶとき」をテーマとした。言うまでもなく、小学校での英語教育の導入に当たって学習障害は考慮されていない。しかし、世界基準では約10人に1人のディスレクシアの児童が存在する。まして日本の子どもたちにとって英語は母語ではない。教育界の無理解を著者は強く懸念する。
 一方で、内外の見識ある学者の間では実践的な研究が進み、その成果が日の目を見つつある。著者は、ディスレクシア研究の世界的権威タエコ・ワイデル氏をはじめ5人の専門家にインタビューを試み、本書に収録した。ディスレクシアの傾向があると、英語でつまずくのはなぜか? その原因と対策を知るには最適の入門書だ。
(1540円 岩崎書店)
(由)

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