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熱がこもりやすい体育館の熱中症対策に、全小・中学校に大型扇風機を導入

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施設特集

導入したビッグファン「BF―60J」

埼玉・富士見市教育委員会

 近年の猛暑対策として普通教室のエアコン設置が進む一方、体育館や武道場などの屋内運動場はいまだに整備が遅れている。こうしたなか、富士見市教育委員会では昨年3月、全小・中学校18校(特別支援学校含む)に各4台(合計72台)の大型扇風機を導入し、体育館の熱中症対策として活用している。

四方から風を送り、室内の空気を循環
 高温多湿の環境下におけるスポーツ活動は、熱中症事故を引き起こす危険性が高まる。とりわけ冷房が完備されていない体育館では、夏日には運動が原則中止となる暑さ指数31度を大幅に超えることも珍しくない。同市が体育館に大型扇風機を導入した理由も、まさに体育の授業や部活動の際に子どもが熱中症に罹るのを防ぐためだ。
 学校教育課の武田圭介課長は「猛暑日が続いた一昨年、学校活動中に14名が熱中症による健康被害を生じたことがきっかけです。そこで、市としても学校任せにするだけではない対応が必要と考え、体育館の四隅に1台ずつ配置できるように予算化しました」と語る。
 その上で「体育館は熱がこもりやすく、風通しも悪いため、四隅から風を送ることで室内の空気を循環させるとともに、運動で体が熱くなったときに気化熱で体温を下げる効果を期待しました」と大型扇風機を選択したポイントを挙げた。

各校が暑さに応じて活用した手応え
 導入した大型扇風機は、羽根径60cmのビッグファン((株)ナカトミ製)。「直進性のある強力風や、単相100Vで既存のコンセントが使え、電気工事の必要がないことが決め手になりました」と武田課長。そのほか、取っ手とタイヤ付きで移動が可能、3段階の風力調整、上下に風向も調整できるのが特長だ。
 気になる活用状況については「導入初年度となる昨年の夏は一昨年ほどの猛暑ではありませんでしたが、各校が暑さに応じて適宜活用したと聞いています。特に小学校は体育だけでなく朝会など児童が集まる機会も多いため、熱中症予防として重宝したのではないでしょうか。また、学校の体育館は災害時には避難所を兼ねることから、防災機能の強化という点からもよかったと思っています」と効果を口にした。なお、使い始めて1年経つが故障などもないという。

今すぐできる暑さ対策として
 文部科学省の昨年9月時点の調査によれば、政府の緊急対策として補正予算を手当された普通教室と異なり、体育館等のエアコン設置率はいまだ3%程度で、子どもたちのスポーツ活動には常に熱中症への不安がつきまとうのが実態だ。しかし、夏季の気温上昇は待ってはくれない。だからこそ、今すぐできる暑さ対策として、まずは同市のように大型扇風機などの導入を迅速に進める必要がある。


武田 圭介 課長

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