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スクールハラスメントの課題と求められている対策

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特集 教員の知恵袋

 近年、学校という閉鎖的空間で教員間や教員と生徒間で、暴力行為または肉体的・精神的に苦痛を強いる「スクールハラスメント」が起きていることが課題にあげられています。

 教育環境に悪影響を与えるスクールハラスメントを防ぐためには、どういった行為がハラスメントに該当するのか把握しなければなりません。最近ではハラスメントに対するさまざまな対策が進められているので、それらを紹介しながら解説していきます。

スクールハラスメントの定義とは?

 スクールハラスメントとは、学校内で行われる嫌がらせやいじめといった相手に苦痛を与える行為のことです。

 今までは会社や仲間内だけに留まっていたハラスメントも最近では学校の教員間までに発展しています。子どもたちが成長する環境の裏側で、嫌がらせやいじめといったスクールハラスメントが問題です。

・相手に不快感を与える行為がハラスメントに

 ハラスメントは自分の基準で図るものではなく、相手の気持ちが重要です。一人ひとりが持つ尊厳を傷つける行為は全てハラスメントに該当します。また、ハラスメントにはいくつかの種類に分けられ、これらに注意しなければなりません。

―パワーハラスメント(優位性を利用して相手に肉体的、精神的な苦痛を与える)
―セクシャルハラスメント(相手を不快にさせる性的な発言)
―アルコールハラスメント(飲み会における飲酒の強要や相手に迷惑をかける)

 そのほかにも、モラルハラスメントやセカンドハラスメントといったものがあり、近年では種類も増えてきています。

・学校内で起こるハラスメントの例

 スクールハラスメントとして教員間いじめを取り上げましたが、より一般的なケースとしてあげられているのが教員から生徒へのパワーハラスメント及びセクシャルハラスメントです。

―宿題をしてこなかった生徒を長時間立たせる
―時間内に給食を食べ終えられなかった生徒に対して次の授業時間中も食べさせる
―生理が始まった生徒の体育見学を認めない
―忘れ物をした生徒のことを一日中無視をする
―生徒の容姿や出身地を馬鹿にする

これらは教員と生徒間の問題です。こういったハラスメントを防止するためには、何を行う必要があるのでしょうか。

スクールハラスメント根絶に向けた防止策

 学校で起こるスクールハラスメントを防ぐためには学校関係者の協力が欠かせません。

 千葉県教育委員会では、平成11年8月に「セクシュアルハラスメント防止についての指針」を制定、周知・徹底を図るとともに、平成16年度から毎年全生徒職員対象に「セクハラに関する実態調査」を行っています。さらに、セクハラ相談窓口の設置やセクハラに関する教員研修をしてその防止に努めています。

 また、神奈川県教育委員会では啓発資料やポスターを作成することで教員だけではなく、生徒にもセクハラに対しての正しい理解を深めてもらい、予防に結び付けようと対策しています。

・千葉県と神奈川県の対策例

 アンケート調査はスクールハラスメントの有無を把握する第一歩です。千葉県では記名式で大規模な調査、神奈川県は匿名で任意提出を採用しています。

 神奈川県のアンケートでは被害の有無から回答します。もし、被害を受けたのであれば加害者や被害の程度など具体的な事例を調査。これらによってスクールハラスメントが起こった際にすぐに対処できるほか、アンケートの存在自体が抑止力を持つものとして期待されています。

・教員に向けたハラスメントの理解定着へ対策

 各都道府県の教育委員会だけではなく、文部科学省も教育現場でのセクハラ防止策を定め、その周知徹底を図っています。

 また、各都道府県の実情に即したガイドラインが必要です。千葉県や神奈川県のほかにも、長野県のようにスクールセクハラに関する研修を多く取り入れることで、教員に正しい認識を持たせることに期待されています。

スクールハラスメントの対策と今後の課題

 ここまでスクールハラスメント防止策の取り組みを紹介しました。しかし、実際に起こってしまった際の対応は十分とはいえない状況です。その問題の一つに、相談窓口の少なさがあげられます。公立校であれば管轄している地方自治体へ相談可能ですが、私立校の場合は学校にしか相談できません。

 また、スクールカウンセラーやハラスメント担当教員が話を聞いて終わるといったこともあり、解決には程遠いものです。相談したら、かえって悪化してしまうケースも考えられますので、ハラスメントに悩んでいる人が安心して過ごせる指針の制定や対応が常に求められています。

スクールハラスメントを根絶させ、安心して学習できる教育環境を

 スクールハラスメントによる影響で学校に行けなくなったり、転校を余儀なくされたりする生徒が存在する以上、この課題は決して軽視できるものではありません。

 全都道府県でアンケートによる実態調査やリーフレット配布やポスターによる意識啓発、教員研修、相談窓口の周知徹底するなど、発生を防ぐだけではなく起こった際の手厚い対応が必要不可欠です。児童生徒が安心して学習に専念できるように、視野を広げたスクールハラスメントの防止・減少に取り組む必要があります。

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