日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

自治体レベルで広がる熱中症対策 目視での察知が難しい判断をIoTが支援

14面記事

企画特集

年々猛暑が厳しくなる中で、熱中症対策は学校だけでなく、市民の命を守るという観点から自治体全体で取り組むべき課題になっている。ここでは、IoTを活用した暑熱対策も含め、代表的な取り組みを紹介する。

ウェアラブル端末で運動中の生体情報をモニタリング
 奈良県生駒市は民間企業と連携し、「学校現場におけるIoT技術を活用した暑熱対策」のモデル事業を実施した。ここでは、炎天下や湿度の高い体育館での運動が行われる部活動における健康状態の悪化や体調不良を事前に察知するため、ウェアラブル端末を着用した生徒の生体情報(心拍数・呼吸数など)をスマートフォン等により、データ化・見える化してモニタリング解析。当該地点のピンポイントの温度や湿度の気象データを提供し、中学校部活動中における生徒の暑熱対策を効果的に行う実証を進めている。
 市はこうした事業に取り組んだ理由について「熱中症事故の防止について、さまざまな注意喚起や対応マニュアルが準備されているが、教育現場での教員判断や、意識に頼らざるを得ない状況がまだまだ多く、痛ましい事故が毎年起こっている背景がある。また、実際に体調不良が発生する際には、目視での察知は非常に難しく、また本人でさえも、気づいたときには体調を崩した後となることが多いため、事前予防を実施することに、大きな課題がある」としている。
 大阪府吹田市は昨年の夏、NTT西日本などの企業と計測センサーを用いた暑さ指数の実測・視える化による熱中症対策を、市立千里中学校において実施。ここではクラウド上に蓄積されたデータによって暑さ指数をタブレットなどから確認できるほか、基準値を超えた場合は校内に設置したパトランプやメールでアラームを発出することで、学校全体にタイムリーに注意喚起し、速やかな対処を促した。

地域における「暑さ対策」を表彰
 「暑さ対策日本一」を掲げる埼玉県熊谷市は、熱中症ゼロを目指すべく「暑さ対策プロジェクトチーム」を結成し、幼児や小学生、高齢者などの年齢に合わせた啓発や、大学・企業と連携した取り組みなど多角的なアプローチを実践している。
 その中の1つが、2018年から開催している「涼くまグランプリ(暑さ対策の表彰式)」だ。これは、暑さ対策として取り組んでいる「階段アート」、「みどりのカーテンコンテスト」、各小中学校における「小学校委員会活動支援事業」、「地域へ発信!中学生サポーター事業」の中から優秀なものを表彰し、市全体の「暑さ対策」のレベルアップを図るもの。
 主な受賞校の取り組みは、熱中症指数を掲示した看板を各昇降口に設置。各教室や体育館に熱中症指数計を設置。グリーンカーテンが設置できない場所にシェードブラインドを設置。消防本部を訪問して熊谷市の熱中症の現状を取材し、保健委員会だよりにまとめ、学区の自治会加入世帯(700世帯)に配布などがある。
 また、2017年には市内の保育所の外廊下や通路に直射日光を遮るスタイルシェードを設置。観測データの結果から、直射日光のあたる園庭よりも、スタイルシェード+遮熱塗料(熱交換塗料)のある外廊下では表面温度が20度以上、気温は4度以上低くなることが分かった。

熱中症予防のための環境づくりを推進
 群馬県館林市は、「暑さによる健康被害から市民を守る」ことを共通認識に、市民団体・関係機関・行政が連携し、熱中症予防パトロールやこまめな声かけ活動を展開。緑のカーテンとミストによる「涼み処」や、地域イベントへのミスト扇風機の貸出など、熱中症予防のための環境づくりも行っている。
 岐阜県多治見市は、市民・企業・行政の3者連携で暑さ対策に取り組んでいる。市民へのうながっぱうちわやゴーヤ苗の配布、企業へのミスト発生器設置補助等の各種暑さ対策事業を実施。また、親子参加のクールスポット発見バスツアーや小中学校での熱中症予防啓発を通して、子どもへの啓発にも力を入れている。
 東京都品川区は2011年度から、熱中症対策としてシルバーセンターや児童センターなどの区有施設を開放し、気温の上がる日中に、暑さをしのぐ一時避難場所として利用できる「避暑シェルター」を開設。千代田区も、冷房の効いたスペースを活用し、ひと涼みスポットを区施設に23か所、民間団体に22か所開設している。
 埼玉県行田市では、「熱中症搬送件数ゼロ」を目指して「熱中症おたすけ隊」による熱中症予防活動を実施。市民が集まる場所に出向き、幼児~高齢者までに合わせた出前講座を実施し、市民1人ひとり自らが熱中症予防を推進できるように啓発している。
 国土交通省では、屋上緑化や都市緑化などグリーンインフラを推進したスマートシティを将来構想として掲げている。そのカギを握るのが、IoTにより一定のエリアのエネルギー効率向上を極限まで追求することにある。自治体における熱中症対策も、注意喚起や人の監視に頼るだけでなく、IoTによって科学的根拠を示し、それを住民に適宜提供できる仕組みが早く実現すること期待したい。

企画特集

連載