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イスラム世界を訪ねて 目的地は、学校です

13面記事

書評

井上 直也 著
多様性と未来への可能性伝える

 イスラムとは、アラビア語で「神の教えにすべてをゆだねること」という意味である。この世に唯一の神(アッラー)を信じて帰依し、神の教えを日々実践して生活するイスラム教徒(ムスリム)は現在18億人以上。全世界で約4人に1人がイスラム教徒だ。
 本書は、そうしたイスラム教徒が、その国の全人口の過半数を占めるイスラム国家37カ国を一人で旅した記録である。訪問先は、小学校や中学校・高校、保育園・幼稚園。学校での子どもたちの様子や日常の暮らしぶりが、写真と紀行文で紹介されている。写真の中の子どもたちの明るい笑顔は屈託がなく、授業中のまなざしは真剣そのものだ。そうした子どもたちの姿は、未来への明るい希望を感じさせてくれる。
 一口にイスラム国家といっても、学校教育のありようはさまざまである。義務教育の年限もまちまちで、月曜日から土曜日までの授業の国もあれば、土曜日から木曜日までの国もある。必修の国語が、アラビア語以外の国もたくさんある。学校での礼拝がない国もある。
 他方で、共通しているのは、突然やって来た見ず知らずの異邦人を快く受け入れてくれる教師や子どもたちのホスピタリティと優しさである。その土地の歴史と風土に根差した学校の多様性と未来への可能性をリアルに伝える本書を、多くの教育者に強く薦めたい。
(2200円 かもがわ出版)
(都筑 学・中央大学教授)

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