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国際子ども図書館の活用は子どもたちの本や読書に対する興味関心へつながるか

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特集 教員の知恵袋

 平成30年、文部科学省が実施した『子供の読書活動の推進等に関する調査研究』の調査では、「本を読みたくて自分から読んだ」と回答した子どもは全体回答12,489件のうち、半数以下です。

 子どもたちの読書離れの背景には、インターネットによるコンテンツの普及や電子書籍といった、紙の本を読まなくてもパソコンやスマートフォンで簡単に情報が手に入れられる時代になったことが関係します。

 今回は児童書から高校生に向けた書籍まで取り扱っている「国際子ども図書館」について紹介します。

年齢が上がるにつれて読書量が減る傾向に

 近年、子どもたちの読書量の減少傾向が続いています。文部科学省が実施した『子供の読書活動の推進等に関する調査研究』の調査では、小学生の読書量が最も多く、次いで中学生、そのあとに高校生です。電子書籍だけを読んだ割合では、高校生が最も多い結果となりました。

 紙の本は漢字や文法の知識、知恵が増えます。そして、考える力が身につき想像力にも期待できますが、パソコンやスマートフォンが身近な物になったいま、手軽にインターネットから検索できる環境が読書離れを加速させています。子どもたちの教養を身につけさせるには、本に触れ合う機会や図書館の充実といったことが重要です。

子どもに国内外の本を。読書推進に努める「国際子ども図書館」

 「国際子ども図書館」は、平成12年に国立国会図書館の支部として設立されました。子ども向けの児童書を専門に扱う、日本で唯一の国立図書館です。子どもたちにとって読書離れが進行することは読解力を弱め、感受性や想像力といった心の発達を低下させる深刻な問題につながります。そのような問題に対して、国際子ども図書館はどういった取り組みをしているのでしょうか。

・国際子ども図書館の3つの役割

 国際子ども図書館には大きく分けて三つの役割があります。

 -児童書専門図書館としての役割
 一つ目は児童書専門図書館として国内外の児童書や関連資料の収集や保存、提供、調査研究、研修、情報発信などによって子どもの読書活動を支援していくこと。

 -子どもと本のふれあいの場としての役割
 二つ目は本とのふれあいの場として児童書の提供以外にも各種催物や見学、情報発信などで図書館や読書に親しむきっかけを提供すること。

 -子どもの本のミュージアムとしての役割
 三つ目は、本のミュージアムとして児童書に関する展示会や講演会、各種イベントを通して児童書の魅力を紹介していくこと。

 国際子ども図書館では、国内外の児童書を幅広く提供することで、子どもたち一人ひとりが自分に合った本を見つけて楽しめるように工夫されています。さらに、世界について興味関心を持てる環境作りを目指しています。

・子どもたちの関心を引く国際子ども図書館はどこにある?

 国際子ども図書館はJR上野駅公園口より徒歩10分程度のところに位置しています。

 周りには東京国立博物館や上野動物園といった子どもたちが歴史や動物などを見て楽しめる施設があります。館内には、ベビーシートや授乳スペース、食事スペースといったサービスもありますので、小さい子どもを連れて遊びにいけます。

帝国図書館の歴史を現代に受け継ぐ

 国際子ども図書館は、明治時代に建てられたルネサンス様式の帝国図書館を増改築する形で平成14年に完成(のちに「レンガ棟」と命名)、さらに平成27年に「アーチ棟」が加わり、現在に至ります。

 -レンガ棟
 レンガ棟の一階には小児向けの「子どものへや」、国際理解を深めることを目的とした本と外国の本が約2千冊用意されている「世界を知るへや」、絵本の読み聞かせなどを行う「おはなしのへや」があります。

 二階は児童や中高生向けの書籍や資料が揃えられたスペース、三階は展示・イベントで使用するホールやミュージアム施設です。かつて帝国図書館の貴賓室に使用されていた部屋、写真をもとに再現された内装、100年もの歴史ある大階段や構造体としてのレンガなど、今も当時の面影を体験できます。

 -アーチ棟
 平成後期に増築された一面ガラス張りのアーチ棟の1階は、子どもの読書活動推進に携わる図書館員等を支援するための各種講演会や研修が開かれる研修室。2階には児童書に関する調査研究のための児童書研究資料室が設けられています。アーチ棟は、建物に合わせて壁や窓がカーブを描いた造りで開放的な空間です。

読書推進の一環「学校図書館」への貸し出し

 国際子ども図書館では、学校図書館に対する支援の一環として、外国語の図書を含む児童書等約40冊を貸し出す「学校図書館セット貸出し」を行っています。子どもたちにとって最も身近な学校の図書室で、国内外の本に触れ合えます。

 貸出期間は7週間。現在多くの小学校、中学校、高校、特別支援学校などで活用されています。例えば、小学校で「本を読んで世界を旅しよう!」、中学校で「読書で世界一周!」といった、本と世界に興味を抱かせる多くの活用事例があり、HPで紹介しています。

学校と連携し課外学習に館内見学を提供。子どもたちの読書意欲の向上を目指す

 子どもたちが生活の中に本を取り入れるようになるには、数多くの本に触れる機会が必要です。国際子ども図書館の利用が広まることは、子どもたちの読書離れを防ぐきっかけを作ります。

 ほかにも、国際子ども図書館では子どもたちに本に親しみをもってもらうために、学校を通して図書館見学ができます。保育園や幼稚園、小学校、特別支援学校向けには館内見学や絵本の読み聞かせ、自由に本を取って触れてもらうなど。また、中学生や高校生向けには館内の見学のほか、図書館での調べものを短時間で体験する「調べもの体験プログラム」を提供しています。

アクセス

国立国会図書館 国際子ども図書館
〒110-0007 東京都台東区上野公園12-49
電話:03-3827-2053(代表)
電話:03-3827-2069(録音テープによる案内)
FAX:03-3827-2043

JR上野駅公園口より徒歩10分
東京メトロ 日比谷線・銀座線 上野駅7番出口より徒歩15分

詳細アクセスはこちらからご覧ください。

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