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学校に還す心理学 研究知見からともに考える教師の仕事

14面記事

書評

有馬 道久・大久保 智生・岡田 涼・宮前 淳子 編
学習成果高めるテスト処理など解説

 あとがきに「良い理論ほど実践的なものはない。そしてその逆も真ではないか」と書かれているが、全くその通りの姿勢で貫かれているのが本書だ。「学校に入って研究させてもらったことで得た知見を学校に還す」ために本書を上梓したという。以下、幾つかの事例を通して紹介してみよう。
 3部構成の本書、第1部は「授業をつくる教師」だ。例えば、ここでは学習成果を高めるためのテストの処理方法が紹介されるが、やり方によって大きな差がつくのだ(4章)。読者諸賢はどんな成績処理をしているだろうか? 読めば納得の示唆が得られよう。
 第2部は「子どもを支える教師」。ここではいじめ問題を取り上げる。いわゆる傍観者の問題を心理学的知見を生かし、子ども主導で防止する試みが紹介されている(8章)。じっくり読んで実践に移してみてほしい。
 第3部は「成長する教師」と題する教員の自己研鑽の方法や心構えについてである。最も一般的な校内研修会のやり方についても本書は具体例を示し、効果を上げる運営の仕方等を提案している(16章)。身近な仲間の役割も大きいものがあることが分かる。
 冒頭にも書いたが、理論と実践の融合を図ることが狙いの本書である。使われている図表にも学問的裏付けがあり、安心して読み進められる。さあ、あとは実践あるのみ。
(2200円 ナカニシヤ出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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