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児童生徒に自転車用ヘルメット着用を義務化 家庭での購入負担を実質4分の1に

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北海道・比布町教育委員会

 近年、日本の交通事故件数は減少傾向にあるものの、自転車乗車中の事故割合が増加している。こうしたなか、北海道上川郡比布町では小中学校のすべての児童生徒に、自転車用ヘルメット着用を義務づけている。そこで、同町教育委員会 生涯学習課の黒瀬祐一係長に話を聞いた。

交通安全意識の高まりを受けて30年以上前に義務化
 北海道のほぼ中央に位置し、旭川市に隣接する比布町は、大雪の山々や石狩川の清流に恵まれた人口3700人ほどの小さな町だ。夏はいちご狩り、冬はスキーのメッカとして知られ、「ゆめぴりか」発祥の地でもある。そんな一見、交通事故とは無縁そうな自然豊かな町が、各家庭に自転車用ヘルメットの購入を義務化してから、すでに30年以上を経過している。
 そのきっかけについて黒瀬係長は「特別大きな事故が起きたということではなく、地域での交通安全意識の高まりを受けてと聞いています」と話す。もともと通学距離範囲が10km程度ある児童生徒もいて、現在でも4割ほどの生徒が自転車通学していることも背景にあるのだろう。
 こうしたヘルメット着用の義務化を後押ししているのが、家庭で購入する際の補助制度だ。「購入費用の半額を町が補助するのに加え、地域組織である交通安全協会でも補助を出しているため、家庭での負担は実質4分の1になるのが特徴です」と説明する。
 現在、多くの自治体でも自転車用ヘルメット着用の義務化が進められているが、その際の大きな足かせになるのが家庭における購入費用の負担になる。同町ではこのような手厚い補助を行うことで各家庭での理解を促進し、長年にわたって着用率を高めることにつなげている。その結果、「今では子どもたちが自転車乗車時にヘルメットを着用することは当たり前の風景になり、地域のドライバーにも浸透して安全意識が向上するなど、相乗効果も生まれています」と取り組みの成果を口にした。

近年ではスポーツタイプが人気年度初めに交通安全教育も
 一方、購入する自転車用ヘルメットについては町として指定しているわけではないが、カワハラ製のスポーツタイプを購入する家庭が多いという。「以前はいわゆる通学用の白いヘルメットが主流でしたが、近年ではデザイン性に優れたものが人気ですね」
 また、同町の小中学校では年度初めに交通安全教育を実施し、子どもたちに自転車の乗り方やヘルメット着用の意義、交通ルールの順守などへの理解を図っている。なお、新型コロナによる休業措置の影響から、学校によっては新入生に対する交通安全講習の時間が削られるケースも出ているが、今年も変わりなく実施したという。
 その上で、今後の課題として挙げるのが、活動範囲が一気に広がる小学校低学年への交通ルールの徹底だ。「本町はそれほど交通量のある地域ではありませんが、新興住宅地域などで増えている場所もあります。その中で、放課後などに道路で飛び出しする児童が散見されることから、見つけた場合は名前を確認して学校で指導するよう促しています」と指摘する。
 自転車事故で死亡した人の約7割が頭部に致命傷を負っていることから、道路交通法では、13歳未満の子どもが自転車を運転する際はヘルメット着用が努力義務化されている。しかし、保護者への調査では、ヘルメット着用は6割に満たないのが現実だ。それだけに全国の自治体には、同町のような補助制度を設けるなどして子どもたちの安全確保を急いでもらいたい。

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