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「スタディサプリ」活用した実践発表 「世界教師デー」にオンライン上でシンポ

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 リクルートマーケティングパートナーズ(東京・品川区)は5日、同日がユネスコの「世界教師デー」に当たることにちなみ、同社が提供するICT教育支援サービス「スタディサプリ」などを活用した、高校での教育実践を紹介するシンポジウムをオンライン上で開催した。全国の公私立高校8校が参加し、YouTubeLiveで配信した。このうち3校の発表を紹介する。

個別最適化で希望の進路へ
宮城県石巻西高校

 宮城県石巻西高校の菅野定行校長は、「学びの個別最適化」に向けたスタディサプリの活用方法を発表。学校休業中の生徒への対応などを示した。
 同校は、卒業生の進路が、大学進学が約6割、専門学校が約3割、就職が約1割という進路多様校。菅野校長は生徒について、真面目な子が多いが、自尊心がやや低く、進路に関して失敗を回避するような傾向があり、自ら学びに向かう力が弱いと分析している。
 生徒の学びに向かう力を育成するため、本年度からのスタディサプリの導入を決めた。スタディサプリの機能を生かし、個別最適化した学びを提供することで進路の実現につなげたいと考えた。また、学習活動などを文字や画像で記録しておける「活動メモ機能」を生かしたポートフォリオの作成や、探究学習での活用などにも期待していた。
 1月に導入を決定した後、3月にスタディサプリのアカウント登録の説明文書を生徒と保護者宛てに送り、登録してもらった。新年度の4月から活用を開始し、自宅の通信環境が未整備の生徒には、休業中の登校を許可し、校内のパソコンを使わせた。
 休業中は授業動画の視聴の他、課題の配布などを行った。4、5月分の動画の視聴率は1人当たり約28時間で、2カ月間の課題の提出率も平均で約98%と、高い数値を出していた。教員もスタディサプリを参考に、授業動画を作成した。
 また、教員が自由に設問を設定して生徒に配信できる「アンケート機能」で進路希望調査を行ったことで、休業中にも生徒一人一人の実態を早期に確認することが可能になったという。
 休業中の探究学習では、2年生に動画教材の視聴とアンケート機能でのリポート提出を指示した。各リポートの記述をまとめて学校通信を作成、配布し、全体で共有。リポートには、コロナ禍に関する記述も見られたという。再開後の授業にも円滑につなげることができた。
 成果として、休業中も生徒の学びを止めることがなく、生徒の主体性などの向上も見られたという。

「反転学習」の授業紹介
佼成学園中学校・高校(東京・杉並区)

 東京都杉並区の佼成学園中学校・高校の井上哲教諭は、スタディサプリなどの複数のソフトを活用した実践の一つとして、事前に学習内容を予習して授業で確認を行う「反転学習」を紹介した。
 6年前からICTの活用に力を入れてきた同校。大学入学共通テストの導入などを受け、英語の授業について内容を工夫してきたが、授業での文法を扱う時間の減少などを感じたという。そこで、生徒が主体的に文法学習に取り組めるよう、スタディサプリと「ロイロノート・スクール」((株)LoiLo)の活用を決めた。
 生徒には事前にスタディサプリで授業動画を見ておくよう指示。生徒は動画から内容の要点などをまとめたスライドを作成し、「ロイロノート・スクール」でオンライン上に提出する。
 授業では生徒同士のペアワークで、スライドを使ったプレゼンを実施。ペアワークは相手を変えて何度か行い、最後のペア同士で発表の様子を撮影し合い、全体で「ベストプレゼンター」を決める。教員は「ロイロノート・スクール」から動画で生徒の取り組み方を確認できる。授業の最後には、スタディサプリ内の小テストを配信し、内容の確認を行う。
 こうした反転学習は昨年度から始め、生徒の約8割が取り組みに好意的だという。生徒の文法学習への意識の変化なども見られた。

英語リスニング力を強化
富山県立南砺福野高校

 富山県立南砺福野高校の石黒佳奈教諭は、「スタディサプリENGLISHの家庭学習を日常化させリスニング力を強化した取り組み~あなたの『当たり前』とは~」をテーマに、主に英語でのスタディサプリの活用を発表。生徒がスマートフォンを使って自宅でスタディサプリを活用し、リスニングの練習問題に取り組めるようにしたいと考えた。
 石黒教諭はスタディサプリの導入前、生徒のスマートフォンの所持率を調べ、どの生徒に対しても等しく実施できるかを確認した。
 対象生徒のスマートフォンの所持率が100%だったことを受け、希望者を募り、約1カ月の試行的な導入から開始。試行の結果、約8割の生徒が「使いやすい」と評価したため、本格的な活用を決めた。
 予算は従来の問題集の精選で教材費から確保し、各学級の代表の保護者から意見をもらった後、保護者全体に説明した。
 導入した初年度はリスニングを中心に活用していたが、大学入試に関する仕組みの変更が発表され、4技能に特化したコースに変更した。
 また、コロナ禍での学校の休業を受け、スタディサプリで学べる教科を5教科に拡大。主に教員側から生徒に一括で課題を配信できる機能を活用した。例えば、英語では月・水・金曜日にリスニング、土曜日に共通テスト関係と、曜日ごとに配信する内容を決めていた。
 教員は生徒の課題チェック表を、定期的に教室に掲示。ホワイトボードにもスタディサプリについて書く欄を設け、生徒との交流の場にした。
 4月から9月までの約5カ月間を振り返ると、対象生徒の約7割がスタディサプリを継続して使用していた。石黒教諭は今後の検討事項に、生徒への動画視聴や課題の指示など「教員のサポートはどれだけ必要か」を挙げたが、生徒へのアンケートで約4分の3が配信の継続を希望していたため、当面は続ける予定だ。

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