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いろいろな香りを言葉に変換 AI教材を企業が開発中

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 生活の中にあるさまざまな香り。そのイメージを言葉にして変換するAIシステム「KAORIUM(カオリウム)」を活用し、低学年の生活科向けの新しい教材開発が進められている。手掛けるのはSCENTMATIC社、開発協力はリバネス社。愛知教育大学学長の野田敦敬教授による監修の下、来年4月からの販売予定だ。学校現場には今までにない感性教育の一つとして、新しい可能性に期待が寄せられている。

生活科向け 感性教育で
子どもが「におい探検」、表現を確認

 現在、開発されている教材は「教育プログラム『カオリウム実験教室』」(授業展開案やワークシートも兼ねたテキストなど)。授業時間は90分(2コマ)で専門家らを交えた出前授業を想定している。
 グループで取り組む体験型ワークショップが中心になる。その特色は、学校や教室の中にある香りをきっかけに言葉の表現力を高めながら感性を豊かにしようと、タブレット端末で「カオリウム」を活用した活動があること。子どもたちが楽しく集中して取り組める工夫が凝らされている。脳の活性化にも
 SCENTMATIC社(https://scentmatic.co.jp/)はITベンチャー企業。「好き」「嫌い」で判断されがちな目には見えない香りに着目したことがきっかけだった。そこに言葉を組み合わせ、新しい体験感覚が生み出されると考え、「カオリウム」の開発に至ったという。香りと言葉の関係については、共同開発している東原和成・東京大学大学院教授から「脳全体を活性化させる効果もある」と指摘されている。
 飲食やエンターテインメントなどでの活用が考えられる「カオリウム」。感性教育に軸を置きたいという思いを大切にし、生活科の授業づくりなどに詳しい野田教授から指導・助言をもらうことになった。「見付ける」「比べる」「たとえる」などの多様な学習活動に重点を置く生活科。その特質を踏まえつつ、嗅覚のコンテンツも少なかったことから約1年をかけて教材開発を進めてきた。
 コロナ禍の影響で短かった夏休み期間中、感性教育の一環として「香り×言葉の超感覚体験」を掲げ、花の香りから物語を作るオンラインワークショップも実施。子どもの保護者から好評だったという。

授業形式で体験会
 教材作成に当たり、学校現場の視点も大切になる。SCENTMATIC社は10月25日、名古屋市内で生活科に詳しい教育関係者7人を招いて授業形式の教材体験会を行った。授業展開案に基づき、ワークシートを兼ねたテキストも使用。授業後の検討会で寄せられた声を反映し、最終的な完成品へとつなげていきたい考えだ。
 まず話題に上ったのが導入部分。さまざまな香りがあることを学んだ後、子どもたちは「におい探検」に出掛けることになる。最終的に「におい博士になる」というストーリーを持たせた方が良い点に加え、何かグッズを持たせた方が良いという指摘も。例えば、紙コップの底に穴を空けて「犬の鼻」になる設定にすれば、子どもたちはターゲットを絞って匂いをかぐことに集中できるという。
 単元の位置付けや各教科等の関連性などに触れ、それから話題になったのが「カオリウム」の扱い。出てくる言葉が子どもにふさわしいものかという吟味に加え、子どもが対象の匂いを言葉で表現できるようにするための手だての工夫などについても議論を交わした。
 改善の余地はまだまだある。「香りと言葉がまだ見ぬカルチャーを生み出す」という思いの下、来年4月に向けて全国の公立・私立小学校の生活科向けワークショップ型教材としての完成を目指していく。

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