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教職員によるセクハラ「大人がやめさせた」5% 被害者ら第三者調査の義務化訴え

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 教職員から性暴力や性的嫌がらせの被害を受けた人、受けそうになったことがある人を対象とした調査で、保護者や警察、他の大人が介入して加害行為をやめさせた割合は5%弱にとどまることが10日、分かった。被害者とその支援団体がインターネットを通して行ったもの。加害者の多くは、処分を受けることなく学校への勤務を続けている可能性があるとして、第三者機関による調査・判断の義務化などを掲げた要望書を文科省に提出した。
 教職員から児童・生徒への性暴力や性的嫌がらせは「スクールセクシュアルハラスメント」などと呼ばれる。深刻な場合、被害者は心理的な傷害を長く負うことが明らかになっている。
 この調査は、15歳から19歳まで中学校の教員から性暴力被害を受けたとして、教員の性暴力を防ぐ活動に取り組んでいる石田郁子さんが中心となって行った。今年7月、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使って、教員による性被害を受けたことがある人、受けそうになったことがある人に、協力を呼び掛け、149件の有効回答を得た。
 このうち、被害が継続した事例(109件)について、被害がどのように終わったかを尋ねたところ、自分が卒業するなど「教師に会わなくなったことによる自然消滅」が53・8%と多く、「自分が学校を休んだり、転校したりした」(13・9%)、「理由は分からないが、教師が加害しなくなった」(10・2%)が続いた。
 「保護者や警察、他の大人が介入して教師の加害をやめさせた」は4・6%にとどまった。
 他に、「教師に近づかないようにしたり、嫌がっている態度を示した」(6・5%)、「教師に嫌だとはっきり言った」(4・6%)といった回答があった。
 無回答(1件)を除いて集計している。
 「保護者や警察、他の大人が介入して教師の加害をやめさせた」との回答は5件あり、このうち2件は教員が退職に至った。
 文科省の集計によると、平成30年度に、わいせつ行為関連で懲戒処分を受けた教員の人数は282人で、増加傾向にあった。今回の調査では、大人が介入した事例がわずかにとどまったことから、教員によるわいせつ行為は年に2万件以上あるとの試算を示している。
 具体的な加害行為について複数回答で挙げてもらった結果では、「体を触られる、触らせられる」(51・0%)、「性的な発言、会話をされる、関与させられる」(43・0%)、「性的な行為(キス、抱きしめる、口腔性交、性行為など)をされる、させられる」(26・2%)、「自分の体を見られる」(26・2%)、が多かった。
 石田さんは、この調査と並行して9月に、文科省への政策提言をまとめている。今回の要望書では、政策提言の実行を教育委員会に委ねるのではなく、全国統一して実行するよう求めた。
 併せて、調査結果を踏まえ、2項目を重点政策として示した。
 その一つが、第三者委員会による調査の義務化。加害行為が見逃され、免職とならなかった教員が学校に残るなら性暴力は続くとして、弁護士、精神科医、児童福祉司、臨床心理士などで構成する第三者委員会による中立的な調査・判断の義務化を求めた。
 他に、加害教員以外の教員による通報の義務化などを掲げている。

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