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価値観を広げる道徳授業づくり 教材の価値分析で発問力を高める

16面記事

書評

高宮 正貴 著
教育哲学、倫理学から道徳科の正当性説く

 著者の研究する教育哲学、倫理学の切り口から、道徳科の意義、学習指導要領などで示された目標を、どう授業に落とし込むかなどを示し、異色である。特別の教科化に際し、批判の論点となった内心の自由の侵害、市民教育で代替可能、教育活動全体の中で行うことで事足りるなどについて、著者なりの見解を持って、「道徳科を擁護する書」となっている点も、一般的なノウハウ本とは異なる。
 特に「道徳の授業方法の論争に終止符を打つ」(第3章)や「『押し付け道徳』に陥らないために」(第4章)では、これまでの道徳授業の課題を整理し、解決策を提案した。例えば「心情追求型」授業を取り上げ、その是非の背景にはカントの「理想主義」とデューイの「現実主義」につながる道徳観の対立があることを指摘。本書は理想主義の立場から授業方法の改善策を示す。
 また、特定の価値観の押し付けといった批判を払しょくするため、「道徳的価値」と「道徳的価値観」の違いをより明確にすることを求め、道徳的価値を考えることと物事について多面的・多角的に考えることは不可分と、学習指導要領「道徳科の目標」の次期改訂時の修正案も掲げた。
 特別の教科にどう向き合えばよいか、気になる点を抱える教員などには、自省するための材料を提供し、道徳の授業づくりへの刺激を与えてくれるのではないか。(2750円 北大路書房)
(矢)

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