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未来の学校 ポスト・コロナの公教育のリデザイン

13面記事

書評

石井 英真 著
オープンで多様性ある教育へ

 感染拡大防止のための臨時休業やオンライン授業などで、これまで当たり前と思われていた「学校に行き、先生やみんなと一緒に学習する」ということが制約されてしまった。改めて「学校とは何か」「授業とは何か」「教師は何をするのか」など、学校教育の在り方を考えさせられることに。
 著者は、コロナ禍は、もともとあった社会や学校の問題を、より顕在化・先鋭化させた部分が大きいとして、これを公教育のバージョンアップの機会とすべきと論を進める。日本社会のデジタル化が遅れていることが顕在化し、文科省は、テクノロジーを使った教育の実現を加速。AI社会や非常事態への対応である。
 しかし、著者は、「未来の学校」構想に、質の異なる学びを実現する可能性はあるが、影の部分についても考えるべきとする。また、「真正の学び」の実現や「非認知的能力」の育成に向けて、日本の学校が伝統としてきた「全人教育」の強みと弱みを整理し、教科学習でも質の高い人間教育を目指すべきと説く。そして、真にオープンで多様性のある公教育が生まれることを期待すると結ぶ。
 本書は、「コロナ禍のなかで学校を問う」「『未来の学校』への改革をめぐる論争点」「資質・能力ベースの改革の行方」「人間的成長に響く質の高い教科学習へ」「『日本の学校』の新しい形へ」の5章で構成されている。
(1760円 日本標準)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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