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書き下ろし 教育学特別講義

18面記事

書評

森部 英生 著
学校教育の価値、見つめ直す契機に

 退職して早10年、評者は本書のまえがきの次の一節が感慨深い。
 <子ども・青年たちの様子に目を向けると、少子化、貧困、引きこもり、ネット依存、文字離れ、SNS被害、政治的無関心(政治不信)等々が広まっています>
 現状の教育改革は、これらの社会状況から生まれる問題を解決できたかのように、次から次へと新しい取り組みを、学校現場に求めた。しかし、現実は達成感に乏しく、ただもう新しい取り組みに追われるのが、学校現場の姿であった。
 しかし、この種の本を読み振り返ると、何か大切なことを忘れてきたように思われる。例えば教育の思想の歴史的な流れを論じた中でデューイの教育思想を紹介した後、著者は次のようなコメントを添えていた。
 <教育とは経験の意味を増加させ、経験を改造ないし再組織することであり>
 果たして学校教育は、経験の意味をこれだけ深く捉えて実践してきたのか。
 活動ありきで、活動の意味の追究が足りなかったと、評者自身も反省する。ただもう時代の要請に流されて、流行を追うようにして教育を展開してこなかっただろうか。
 このような本を読み、改めて学校教育の価値を見直すことが今こそ求められる。
(2860円 川島書店)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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