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教育旅行での平和学習、「まとめ動画」を全校に配信

12面記事

企画特集

平和祈念公園内でのグループ活動

大阪府・摂津市立鳥飼東小学校

広島での平和学習を中心に
 摂津市立鳥飼東小学校(中嶋和明校長、児童数183)の6年生の修学旅行は、2020年10月13日から1泊2日で、広島方面への平和学習を中心とした内容で実施された。安心・安全な旅行にむけ配慮することを最優先に考え感染症対策を十分に行った。マスク着用とこまめな手洗い、大声で話さないなど日常の感染予防のルールは修学旅行中も同じように守った。移動中の新幹線では座席を向かい合わせにせず、同じ方向を向いて静かに過ごす、宿舎などでの食事も同様で、間隔を空けて一方向に着席するなど「いのちを守る」ことに細心の注意を払った。
 1日目は学校からバスと新幹線で広島へ向かい、広島平和記念資料館を見学。ボランティアガイドの案内のもと、世界遺産に登録されている原爆ドーム、原爆死没者慰霊碑、被爆したアオギリなど、平和記念公園内の被爆建造物を班に分かれて約3時間かけて見学した。
 なお、広島平和記念資料館は新型コロナウイルス感染予防対策及び拡散防止のため、入館予約システムでの事前予約を実施している。希望する日程の予約が取れない場合や、感染の拡大状況によっては臨時休館となることを想定し、十分に計画を練ったという。
 2日目は遊園地で半日の班行動となった。買い物をしたり、アトラクションを巡るなど、思い思いに楽しんだ。例年は海で手漕ぎボート「カッター」の体験学習などをしているが、今年は普段の学校生活で我慢する場面が多かったことをかんがみて、あえて、思い切り楽しむことに時間を割いた。子どもたちは充実した2日間を終えて、帰路についた。

タブレットを使いプレゼンに挑戦
 同校では、毎年、修学旅行から戻ると、6年生は広島で学んだことを全校集会「平和報告集会」で発表する。今年度は新型コロナウイルス感染予防対策のため、児童が一堂に会して話を聞くことは難しい。そこで、1人1台のタブレットを用いて、プレゼンテーションスタイルでの報告動画を作成。平和報告集会当日は、事前に共有した動画を各クラスで再生する形で行った。
 修学旅行中は、引率の7名の教員が各1台タブレットを持参し、児童の活動の様子を動画や画像で撮影、事後学習で活用することにした。6年担任の斎藤賢治教諭は「子どもたちには出発前から、新型コロナウイルス感染予防対策の観点から、修学旅行後の平和報告集会を開催するのは難しいこと、それでも何か形にのこすため、タブレットを活用してまとめようと伝えていた」と、活用に向けて十分な説明をしたという。

タブレットを用いてプレゼン資料作成
タブレットを用いてプレゼン資料作成

納得するまで撮影
 報告動画は、班ごとにテーマに沿ったスライドを作ることから始めた。まず、全員でタブレットのルールを1時間、タイピング練習を2時間、プレゼンテーションアプリの基本的な操作を3時間、画像や文字の効果的な提示方法や、動かし方などを指導した。
 基本的な操作を習得した後に、スライド作成に移った。4時間ほどかけてスライドを個人作成し、それらを班で持ち寄り、良いところを取り入れながら1つのスライドを完成させていった。
 スライドが完成すると、次は発表練習と録画作業に移る。大型ディスプレイにスライドを映し、その前に立って説明する様子を教員がタブレットで撮影した。撮影した動画は、斎藤教諭から子どもたちにすぐに共有。スライドや画像、台本が合っているかを確認しながら、タイミングを改善し、納得するまで撮り直す姿が見られたという。
 完成した動画は、12月14日の「リモート平和報告集会」で全クラスに向けて同時再生され、子どもたちは各教室から視聴する形で参加した。スライドの最後に、子どもたちが遊びやスポーツを楽しむイメージ画像を見せながら、「平和は当たり前ではない」というメッセージを訴えた班もあった。タブレットを用いれば、伝えたい意図をより具体的なイメージで表現できることを子どもたちは自然に身に付けていた。

配信用の報告動画を収録
配信用の報告動画を収録

ICT活用の良さ感じる契機に
 報告動画が完成するまでの道のりは、すべてが順調だったわけではない。ネット上の著作物の引用の仕方や、フリー画像素材の扱い方、適切でマナーに沿ったカメラの使い方など、子どもたちは試行錯誤しながら身に付けていった。斎藤教諭は子どもたちにタブレットを渡した時から「君たちが、この学校のタブレットを利用するお手本になる」と、子どもが自ら利用ルールを築き上げ、適切な利用のパイオニアになることを促してきた。今ではどの授業でもスムーズにタブレットを使い、授業が進められるようになった。
 取り組みの過程では、創意工夫の意識も高まった。子どもたちはプレゼンテーションソフトだけでなく、文書作成ソフトを開いて台本を作成・表示するなど、端末の機能を十分に活かした使い方を自然に見いだしたという。スライドの画像を整える、台本を考える、タイピング入力をする、など、一人ひとりの得意なことを生かすチーム意識の向上にもつながった。
 斎藤教諭は、タブレットが導入された直後は、授業の中でどう活用していくか悩んでいたが「タブレットを使う良さを、まず実感させたいと思うようになった」と話す。「新型コロナ予防に配慮しながら、修学旅行で学んだことを全校で顔を合わせずに伝える」という問題解決をする中で、子どもたちはタブレットを使う良さを感じただけでなく、ICT活用の知識や技能も着実に習得できている。

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