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はじめて学ぶ 認知言語学 ことばの世界をイメージする14章

14面記事

書評

児玉 一宏・谷口 一美・深田 智 編著
心の働きとの関係、奥深さに迫る

 題名から対象は初心者と思い、気楽に読み始めたら、とんでもない。そもそも認知言語学とは何か。教育にどう生かすことができるのか。参考文献の膨大な量を見ても、研究者の熱が伝わってくる。認知音韻論、認知意味論、認知類型論…。難解そうだと覚悟してページを進めると、次第に引き込まれながら読み進めていることに気付いた。「なるほど」「そうかも」と納得したり疑問に感じたりしながら著者の巧みな筆致に誘われ読破。
 認知言語学とは、言葉は人間の心の働きに支えられて成り立つとして探究する学問。そこから、言葉を学ぶ面白さ、奥深さを発見してほしいと著者は願う。言葉の世界をイメージしていく14の章は濃密だ。序章は、どの章に興味を持つのか誘う役割を果たす。そこからは読者の興味次第で、どの章からでも読み始めるといい。
 どの章も冒頭に「この章で学ぶこと」と狙いが簡潔に示されている。また、より興味が持てるようなコラムもある。面白いのが、練習問題の掲載。一例を紹介すると、「かど」と「すみ」あるいは「にぎる」と「つかむ」といった類義語の使い分けのルールを説明する問題。果たして外国の人が分かるように説明できるだろうか。
 言葉は奥深いもの、日本語は豊かなもの。ヒトという種に固有の伝達や思考のツールである言語を学ぶ意義深さを教わった。
(3080円 ミネルヴァ書房)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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