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教師にできる自殺予防 子どものSOSを見逃さない

14面記事

書評

高橋 聡美 著
相談や授業での留意点を明示

 平成10年に3万人を突破後、23年まで3万人台で高止まりした「自殺問題」が、コロナ禍の中で再びクローズアップされている。とりわけ女子の中・高校生の自殺増加率を課題視した序章「コロナ禍に起きた子どもの自殺の急増」では、それらの傾向を分析しつつ「子どもたちの自殺は大人たちの責任でしかありません」と日々の丁寧な対応を求める。
 続く全3章では子どもの自殺をどう理解すればいいかを述べ、教師ができる1次から3次までの自殺予防策に触れる。また、指導案などを示しながら具体的な自殺予防につながる授業の仕方を展開した。
 子どもの自殺対策は、かつて多くの犠牲者を出した「交通戦争」への対策に似ているという。自殺では駅ホームへの保護柵、窓への転落防止柵の設置などのハード面の整備、ストレス、心の病気に関する啓発教育、自殺総合対策大綱改正で明記したSOSの出し方教育、いじめのないクラスづくりといったソフト面を充実させていくことを提案する。
 希死念慮を抱いたり自尊感情の低い子どもに対した時の「受容傾聴」する受け止め方例を多く掲載し、ジャッジやアドバイスしてしまう対応を戒めるなどの会話、セリフ例も参考になる。教師として出会う確率の高い自殺遺族の子どもたちへのサポートの仕方にも触れている点も「丁寧な対応」を具現化するのに役立つ。   (1980円 教育開発研究所)
(矢)

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