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子どもの学びと成長を追う 2万組の親子パネル調査から

16面記事

書評

東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 編
影響与える要因、多面的に探究

 本書を手に取った時、日本でも、やっと本格的なパネル調査が始まったと強い感慨を覚えた。子どもの成長を促す、あるいは阻害するさまざまな要因を多面的に捉えるためには、可能な限り多くの調査対象を確保し、長期間にわたって系統的・継続的に調査することが必要である。それを実現したのが本書の「子どもの生活と学び」プロジェクトの調査研究である。
 小学1年生から高校3年生までの親子約2万組を対象に、年1回行う「ベースサーベイ」(生活者・学習者・社会人としての自立度調査)、小学3年生・6年生、中学3年生、高校3年生を対象とする「語彙力・読解力調査」、高校3年生を対象とする「卒業時サーベイ」(進路選択、将来の希望、自立の程度の調査)の3種類の調査を継続して行っている。本書はその中間報告とされているが、幾つかの注目すべき結果が報告されている。学校外の学習時間は、小学6年次が103分に対して、高校3年次には171分と大きく増加すること、高校3年生の進路選択に影響を与える人は「母親」が約77%で最も大きいこと、保護者自身、「保護者の人的ネットワーク」によって成長していると実感していることなどである。
 今後、研究データは公表される予定である。自校のデータと比較して、教育戦略を構築するのに活用することが大いに期待できる。
(3300円 勁草書房)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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