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最後の講義 完全版

20面記事

書評

福岡 伸一 著
生命の不思議を易しく解説

 いつも「最後の授業」と思って授業に臨むことは基本であるが、何度もやり直せるという油断が評者にはある。タイトルの最後の講義とした理由、もし何かの理由で明日、私が消えてしまうとしたら、「今日のうちにぜひ、これだけは…」という思いで行った授業のエキスが書かれている。専門性をひけらかす表現ではなく、大衆の目線から素朴な疑問を自らの懐に入れて解説するために、実に分かりやすい。その対象は小学校高学年でも理解ができる内容になっている。
 「生命は機械ではない」「1年前の自分は別人である」「命に刃を向けた人間」「質疑応答」の4章構成。疑問に答えるように平易に書かれている。目からうろこがボロボロと落ちること請け合いである。

 ・体は絶えず入れ替わるのに、なぜ老けるのか?
 ・脳も入れ替わるのに、どうして記憶は消えないの?
 ・生命はどこまでが生命なのか?

 ―は実に興味深い。
 中でも「動的平衡」という視点は生命そのもののありようを示す言葉であり、その視点で生命を、そして自分自身を見直すことが不可欠になったコロナ禍の時に、地球規模で生命の存在意義やバランスを考えざるを得ない時を迎えている。その意味で私は小学校教諭や保護者が読まれることを推奨したい。著者の執筆エリアはフェルメール、ドリトル先生航海記など興味津々である。
(1320円 主婦の友社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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