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英語学習における校種間連携の架け橋として

8面記事

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画像はコロナ禍以前に撮影

世界基準の英語テスト TOEFL Primary(R)導入の利点とは
大阪・近畿大学附属中学校

 2021年度からいよいよ、中学校で新学習指導要領が全面実施となる。外国語科においては教室をコミュニケーションの場と捉え、生徒の4技能をバランスよく伸ばす授業への転換が求められている。近畿大学附属中学校では建学の精神である「実学教育」を実現するため、国際的な英語運用能力テストTOEFL Primary(R)を全校で導入した。生徒の学習意欲を高めるだけでなく、小中高大の連携や大学入試も見据えた、自ら学びを進められる生徒の育成に役立てている。

実学教育の精神が息づく伝統校
 「実学教育」と「人格の陶冶」を建学の精神とする近畿大学学園。附属高等学校・中学校は昭和14年以来の歴史を持ち、社会の変化に応じて生徒たちに最も必要な教育を求めて変革を続けてきた。教育理念である「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう」を校訓に掲げた全人教育を実践している。
 英語教育においても、実学教育の視点から「社会に役立つ人材」にふさわしい資質・能力の育成に力を注ぐ。英語科教員は、4技能をアクティブラーニングの要素を取り入れながら教える外部研修を受けており、中学校学習指導要領の全面実施に向け「英語で教える」授業への準備も着実に進めてきた。

全学年・全員受験で成績にも反映
 2019年よりTOEFL Primary(R)を中学校で導入し、現在、2・3 年生は年2回、1年生は年1回受験する。導入の理由は「テストの内容や題材が、生徒に身近なものや日常会話、興味を持ちそうな話題で構成されていたこと。授業で教えていることとテストで試すことが近い点に魅力を感じた」と、中学英語科主任の齊藤香織教諭は振り返る。
 試験的に附属高校1年の「オーストラリア語学研修」の選考審査で活用したところ、現地での通学や生活に必要な力を測定するのに最適だったことから、中学全学年・全生徒への導入に踏み切った。
 TOEFL Primary(R)の成績は、生徒の到達度がスコア(得点)で示されたスコアレポートとして返却される。同校ではスコアを評点に換算し、成績評価にも組み込む。定期考査だけでなく、外部試験を活用して客観的に生徒の英語運用能力を評価しようとする学校の姿勢は、保護者にも好評だという。


齊藤 香織 教諭

伸びを実感し目標が立てやすい
 TOEFL Primary(R)のスコアレポートには、その生徒が、リーディングとリスニングについて「何ができるか」が具体的に書かれており、次に「どう学ぶか」のアドバイスも添えられている。
 「丁寧で具体的なアドバイスは、次に必要な学習への動機付けになる。特にリスニングは日々の授業で積み上げることが大事、という継続の意識が芽生えた」と、齊藤教諭は導入後の生徒の変化を感じている。
 2020年度はコロナ禍による一斉休校で、同校も約2カ月のオンライン授業が続いた。そのような中でも、中学3年生は昨年度よりスコアを伸ばし、齊藤教諭を驚かせた。ICTを駆使して授業を行いさまざまな教材を提供してきたことや、TOEFL Primary(R)を繰り返し経験してきたことで、英語学習に対する前向きな姿勢が育まれていたことが、結果的にスコアアップにつながったのではないだろうか。

実施前後の工夫で自律的な学びへ
 このようなポジティブな結果の背景には、授業以外にもさまざまな工夫があった。同校は医薬コース、英数コースアドバンスト、英数コースプログレスの3コース制をとっており、1学年8クラスと生徒数も多い。全校でTOEFL Primary(R) を一斉に実施するとなると、全教員とのチームワークは不可欠だ。テストが円滑に実施できるよう、実施前は全教員の協力を得て準備を進めている。
 テスト後のスコアレポートはコース別に結果や傾向をまとめ、英語科全体で共有。教員一人ひとりに情報を届け、生徒が「受けっぱなし」にならないようにしている。
 スコアレポートに明示されるCEFRレベルは、教師が授業改善や個別支援の手がかりをつかむうえでも役立つと齊藤教諭は感じている。「スコアレポートは生徒が一人で読んでも理解できる内容だが、教員が具体的な教材や、学習法をアドバイスできれば自律的な学びにつながる。今後は各教員が、クラスや個人のフィードバックに生かす機会をより多く作っていきたい」。

小中高大連携や大学入試も見据えて
 TOEFL Primary(R)の魅力は「料金設定や扱う題材も含めて受験しやすい“身近な存在”であると同時に、世界47カ国以上で活用されている“世界基準のテスト”であること。日々成長する生徒をしっかり捉えることができる」と齊藤教諭。
 附属校として、大学が求める実践的な英語力を身に付けた学生を送り出すこと、また、外部受験をする生徒には、「大学入学共通テスト」に対応した英語力を伸ばすことが求められる。この冬に第1回が行われた「大学入学共通テスト」の問題を見ても「自分から発信するアウトプットの力から、一定の分量の英文を読みこなす力まで、バランスよく育てていく必要性がある」と分析する。
 幼稚園から大学までを擁する総合学園として、校種間の連携も重要だ。小学校と高校とをつなぐ中学の英語教育は、その要となる。附属小学校でのTOEFL Primary(R)の導入も進んでいることから「TOEFL Primary(R)が小中高大連携の架け橋となり、生徒が自信をもって英語学習に取り組む原動力になれば」と齊藤教諭は締めくくった。

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